おはようございます!
今日も元気な膝に感謝している塗山です!
今回のテーマは、
変形性膝関節症と膝窩部痛についてです。

膝窩部痛って知ってますか?

ひざの後ろのことかしら?
変形性膝関節症と膝窩部痛:その原因と対策について解説
1. はじめに
どーも!整形外科医の塗山正宏です。
今回は膝の話ですよ~♪。
変形性膝関節症(knee osteoarthritis)は高齢者に多く見られる疾患であり、関節軟骨の摩耗や変形によって膝の痛みや可動域制限を引き起こします。
一般的には膝の前面や内側の痛みが多いとされていますが、膝の後ろ側(膝窩部)に痛みを訴えるケースも少なくありません。
この記事では、変形性膝関節症と膝窩部痛の関係、原因、鑑別すべき疾患、そして治療法について文献を交えて塗山が笑顔のままで詳しく解説します。
2. 膝窩部痛とは?
膝窩部痛は、膝関節の後方、膝の裏側に生じる痛みのことを指します。
変形性膝関節症に関連する場合、関節構造の変化や周囲組織へのストレス増加が主な原因となります。
3. 変形性膝関節症における膝窩部痛の原因
2-1. ベーカー嚢腫(Baker’s cyst)
最も代表的な膝窩部痛の原因の一つがベーカー嚢腫です。
これは関節包の後方に滑液が貯留して嚢胞が形成された状態であり、変形性膝関節症の患者さんにしばしば認められます。
- ベーカー嚢腫は、滑膜炎による滑液過剰産生と、関節内圧の上昇が引き金となり膝窩部に突出します(Rauschning W, 1980)。
- 嚢腫が大きくなると、腓腹筋の間や神経・血管への圧迫が生じ、膝の後ろに痛みや圧迫感、時にしびれが出ることがあります。
2-2. 半月板損傷と後節の病変
変形性膝関節症では、しばしば内側半月板後節の断裂や変性が見られ、これが膝窩部痛として感じられることがあります。
MRIでは後節の信号変化や断裂が確認されることが多いです。
2-3. 膝窩筋(Popliteus muscle)への過剰負荷
膝窩筋は、膝関節の安定性を保つ重要な筋肉です。
特に内反膝や歩行のバランス異常があると、膝窩筋に負担がかかり、炎症を起こして痛みを生じることがあります(LaPrade RF et al., 2003)。
2-4. 神経由来の痛み
膝窩部には、脛骨神経や腓骨神経といった重要な神経が通っており、これらの絞扼や圧迫によって生じる神経性疼痛も膝窩部痛の原因になり得ます。
4. 鑑別すべき疾患
変形性膝関節症と膝窩部痛が合併する際は、以下の疾患にも注意が必要です。
疾患名 | 特徴 |
---|---|
深部静脈血栓症(DVT) | 腫脹・熱感・発赤を伴う場合あり。 |
膝窩動脈瘤 | 拍動性の腫瘤として触知される。動脈超音波やCT検査が有効。 |
腫瘍(ガングリオン、軟部腫瘍など) | 進行性で固い腫瘤を伴う場合はMRIなどで評価が必要。 |
5. 膝窩部痛の診断と検査
- 身体診察:膝窩部の圧痛、腫脹の有無、可動域制限などを確認
- 超音波検査:嚢腫や液体貯留、腫瘤の評価
- MRI:半月板や靭帯損傷、滑膜の炎症評価
- 血液検査:炎症反応の確認(感染や関節リウマチの除外)
6. 治療法の選択肢
6-1. 保存療法
- 冷却・安静・圧迫・挙上(RICE)
- 消炎鎮痛剤(NSAIDs):症状緩和
- 理学療法:膝周囲筋の強化、姿勢・歩行改善
- 穿刺・注射:ベーカー嚢腫への穿刺・滑液除去や、関節内へのステロイド注射
6-2. 手術療法
- 変形性膝関節症が進行している場合には、人工膝関節置換術が適応となることがあります。
- 同時にベーカー嚢腫などの合併疾患も処理されることがあります。
7. 日常生活で注意すべきポイント
- 正しい歩行姿勢の意識:膝に負担をかけすぎない
- 長時間の立ち仕事を避ける
- 膝周囲の筋力トレーニング(大腿四頭筋・ハムストリングス・腓腹筋など)
- 装具の使用:サポーターや膝バンドで膝の安定性をサポート
8. 参考文献
- Rauschning W. (1980).
Baker’s cysts and their relation to the knee joint: an anatomical and clinical study.
→ ベーカー嚢腫は滑膜の炎症と膝関節内圧の上昇によって形成され、関節疾患に合併しやすいと述べられている。 - LaPrade RF et al. (2003).
The role of the popliteus muscle and tendon in posterior knee stability: biomechanical evaluation.
→ 膝窩筋は膝の後方安定性に関与しており、炎症や過負荷が膝窩部痛の原因になり得る。 - Dandy DJ, et al. (1994).
Arthroscopic treatment of symptomatic popliteal cysts.
→ 症候性のベーカー嚢腫に対する関節鏡手術の有用性を示した研究。 - Hunter DJ, Felson DT. (2006).
Osteoarthritis. N Engl J Med.
→ 変形性膝関節症の一般的な病態と治療戦略について包括的に解説されている。
9. まとめ
膝の後ろ側の痛み(膝窩部痛)は、変形性膝関節症の一症状として見逃されやすいのですが、ベーカー嚢腫や半月板損傷、膝窩筋の炎症など多岐にわたる原因があります。
鑑別診断を行い、深部静脈血栓症や腫瘍などの重篤な疾患を見逃さないことが重要です。
膝窩部痛の原因に応じて、保存療法から手術療法まで、症状に応じた治療を選択することが求められます。
以上、膝窩部痛についてのお話でした。
参考になりましたでしょうか?
少しでも参考になっていれば幸いです。
では、また!
膝窩部痛には色々な原因あるので、それに対応した治療を行う!

「人生、ゆっくり生きて行こうにゃ。」
スローライフを送りたいけど、結局日々あわただしく生きている整形外科医の塗山正宏でした!
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医
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