格言 Season181

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―整形外科治療の本当のゴールとは―

整形外科医の塗山正宏です。

外来で患者さんから、こんな質問を受けることがあります。

まさこさん
まさこさん

先生、この痛みは完全になくなりますか?

もちろん、痛みを軽減することは治療の大きな目的です。

しかし私は少し視点を変えて伝えたいです。

塗山先生
塗山先生

痛みがゼロになることより、人生が前に進むことのほうが大切です。

これは、人工股関節置換術や人工膝関節置換術、そして変形性関節症の診療を続ける中で、私自身が何度も実感してきた言葉です。


痛みは、VAS(視覚的評価尺度)などで数値化できます。

しかし人生は、数値では測れません。

  • 行きたかった場所に行ける
  • 家族と外出できる
  • 仕事や趣味を再開できる
  • 自分の足で生活できる

これらはすべて、「痛みが少し残っていても実現できる人生」です。

実際、「軽度の痛みが残っていても、満足度は高い」という報告は、人工関節の研究でも数多く示されています。


痛みを完全になくそうとするあまり、

  • 動くのが怖くなる
  • リハビリを控えすぎる
  • 活動量が落ちる
  • 筋力が低下する

という悪循環に陥ることがあります。

これは本末転倒です。

整形外科治療の目的は、
「痛みを全く感じない身体」を作ることではなく、
「痛みと付き合いながらでも動ける身体」を取り戻すこと
です。

もちろん、「痛みが全くない動ける身体」が理想ではありますが…。


人工股関節置換術や人工膝関節置換術は、関節の痛みで人生が止まりかけている方にとって、非常に有効な治療法です。

手術後、

  • 痛みはゼロではないが歩ける
  • 不安はあるが外出できる
  • 完璧ではないが生活できる

この状態こそが、人生が再び前に進み始めた証拠 です。


他人と比べる必要はありません。

完璧を目指す必要もありません。

  • 昨日より少し長く歩けた
  • 昨日より少し楽だった
  • 昨日より少し外に出られた

それだけで十分です。

人生は、「痛みがゼロになった日」から再開するのではなく、「一歩踏み出した日」から動き始めます。


痛みを完全になくすことができない場面もあります。

それは医療の限界でもあります。

しかし、人生を前に進めるお手伝いは、必ずできます。

塗山先生
塗山先生

痛みがゼロになることより、人生が前に進むことのほうが大切です。

この言葉を、不安の中にいる患者さん一人ひとりに届けたいと思います。

そして、その「前進」を、整形外科医として一緒に支えていきます。





【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医

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