おはようございます!
大腿四頭筋にはこだわっていきたい塗山正宏です。
今回のテーマは、
人工膝関節置換術と大腿四頭筋についてです。

大腿四頭筋は大事なんですよ!

やはりそうなんですね!
人工膝関節置換術と大腿四頭筋の関係について詳しく解説
どーも、整形外科医の塗山正宏ですよ!
今日は膝についてのお話ですよ。
人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty: TKA) は、変形性膝関節症の進行による痛みや機能障害を改善するために行われる有効な手術です。
しかし、人工膝関節置換術後に大腿四頭筋(Quadriceps Femoris) の筋力低下が顕著にみられることが問題となることが多く、術後の回復や日常生活動作(ADL: Activities of Daily Living)に影響を及ぼします。
この記事では、人工膝関節置換術後の大腿四頭筋の機能低下の原因、影響、および効果的なリハビリテーション方法について、整形外科医塗山が笑顔を交えながら詳しく解説します。
1. 大腿四頭筋の役割と人工膝関節置換術後の影響
大腿四頭筋の解剖と機能
大腿四頭筋は、膝の伸展(伸ばす動作)を担う主要な筋群であり、以下の4つの筋から構成されます。
- 大腿直筋(Rectus Femoris) – 骨盤(下前腸骨棘)から始まり、膝蓋骨を経由して脛骨粗面に付着。膝関節の伸展だけでなく、股関節の屈曲にも関与する。
- 内側広筋(Vastus Medialis) – 大腿骨の内側を走り、膝蓋骨の内側を安定させる役割を果たす。
- 外側広筋(Vastus Lateralis) – 大腿骨の外側を走り、膝の安定性に寄与。
- 中間広筋(Vastus Intermedius) – 大腿骨の前面を覆い、膝の伸展を助ける。
これらの筋肉は、歩行、階段昇降、立ち上がり、バランスの維持 など、日常生活に不可欠な動作を支えています。
人工膝関節置換術後の大腿四頭筋の筋力低下
人工膝関節置換術後、大腿四頭筋の筋力は術前と比較して著しく低下します。
研究によると、術後3ヶ月時点で健側(手術を受けていない側)と比べて30~40%の筋力低下 が報告されています。(Petterson et al., 2009)
筋力低下の原因
人工膝関節置換術後の大腿四頭筋筋力低下の主な要因には、以下のものがあります。
- 術中の筋損傷
- 手術時に膝蓋骨周囲の組織を切開するため、一時的に筋力が低下する。
- 大腿四頭筋の神経支配を担う大腿神経(Femoral Nerve)の微小損傷の影響。
- 術後の疼痛と腫脹
- 術後の痛みがリハビリを妨げる要因となり、筋活動の低下につながる。
- 筋抑制(Arthrogenic Muscle Inhibition, AMI)
- 膝関節に痛みや腫れがあると、中枢神経の働きにより大腿四頭筋の活性が低下する現象。
- 活動量の低下
- 術後は安静が必要な期間があるため、筋萎縮が起こりやすい。
- 術後は安静が必要な期間があるため、筋萎縮が起こりやすい。
2. 術後の大腿四頭筋強化の重要性
術後の大腿四頭筋の回復は、人工膝関節置換術後の患者さんの機能回復に直結します。
- 術後3ヶ月時点での大腿四頭筋の筋力が強いほど、1年後の歩行機能が優れている という研究結果が示されています。(Mizner et al., 2005)
- 階段昇降能力は大腿四頭筋の筋力と強く相関する と報告されています。(Chang et al.,2017)
これらの研究からも、術後のリハビリで大腿四頭筋を強化することが、人工膝関節置換術後の生活の質(QOL)向上に不可欠であることが分かります。
3. 大腿四頭筋を強化するリハビリ戦略
術後早期(~術後1ヶ月)
1. 等尺性収縮訓練(クアドリセップス・セッティング)
- 方法: 仰向けになり、膝を伸ばした状態で大腿四頭筋を最大限に収縮させる。
- 効果: 筋力低下を防ぎ、神経筋制御を改善。
- 推奨頻度: 1セット10回を1日3セット。
2. SLR(Straight Leg Raise, 直腿挙上運動)
- 方法: 膝を伸ばしたまま足を持ち上げる。
- 効果: 大腿四頭筋の筋力維持に役立つ。
術後中期(1~3ヶ月)
3. レジスタンストレーニング
- 方法: ゴムバンドや軽いダンベルを用いて膝の伸展運動を行う。
- 効果: 筋力向上と耐久性向上。
4. バランス訓練
- 方法: 片脚立ちやバランスボードを使用。
- 効果: 転倒予防と安定性向上。
術後後期(3ヶ月以降)
5. 階段昇降訓練
- 方法: 手すりを使いながら、階段を上り下りする。
- 効果: 大腿四頭筋の機能回復を加速。
6. スクワット
- 方法: 椅子に座る→立ち上がる動作を繰り返す(椅子スクワット)。
- 効果: 筋力と持久力の向上。
まとめ
人工膝関節置換術後は、大腿四頭筋の筋力低下が顕著であり、これが機能回復を妨げる大きな要因となります。
術後の大腿四頭筋の筋力が、歩行能力や階段昇降能力の回復に影響を与えるため、早期からのリハビリが重要です。
等尺性収縮訓練、SLR、レジスタンストレーニング、バランス訓練を組み合わせることで、効果的に筋力回復を図ることができます。
適切なリハビリテーションプログラムを継続することで、人工膝関節置換術後の機能回復を最大化し、より快適な日常生活を取り戻していきましょう!
一緒に頑張りましょうか!
塗山は応援していますよ!
じゃあ、またね~♪
人工膝関節置換術後は大腿四頭筋をしっかり鍛えていきましょう!

「二段ベッド!!」
子供の頃は二段ベッドで寝ていた整形外科医の塗山正宏でした!
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医
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