おはようございます!
脱水にならないように水分を積極的に摂取する塗山です。
今回のテーマは、
人工膝関節置換術と糖尿病についてです。

糖尿病って知ってますか?

流石に知っていますよ!
人工膝関節置換術と糖尿病:手術への影響と注意点を解説
こんにちは!整形外科専門医の塗山正宏ですけどなにか?
本日は膝の話題ですよ。
「糖尿病があるけれど、人工膝関節置換術を受けられますか?」
これは膝関節の変形と痛みに悩む多くの患者さんから寄せられる質問です。
この記事では、人工膝関節置換術と糖尿病の関係について、最新の知見をもとに整形外科医塗山が詳しく解説します。
1. 人工膝関節置換術とは?
人工膝関節置換術(TKA:Total Knee Arthroplasty)は、変形性膝関節症などで変形・摩耗した膝関節を人工の関節に置き換える手術です。
関節の痛みや可動域制限を改善し、歩行機能を回復させる治療法の一つです。
2. 糖尿病患者がTKAを受ける際のリスク
糖尿病は、血糖コントロール不良により全身の免疫機能や創傷治癒能力が低下し、人工関節置換術において以下のリスクが高まります。
🔴 感染症のリスク上昇
術後感染(特に人工関節周囲感染:PJI)のリスクが高くなることが報告されています。
HbA1cが8.0%以上の患者では、術後感染率が有意に高いとのデータがあります。(Kamath AF, et al.2015)
🔴 術後の創傷治癒遅延
高血糖状態では、皮膚や軟部組織の治癒が遅れ、創部離開や縫合不全が起こりやすくなります。
🔴 術後血栓・心血管合併症の増加
糖尿病は心血管疾患のリスク因子でもあるため、手術に伴う心筋梗塞や深部静脈血栓症(DVT)の頻度も増加します。
3. 手術を安全に受けるための血糖コントロール目安
評価項目 | 理想的な目安 |
---|---|
血糖(空腹時) | 100〜130 mg/dL程度 |
HbA1c | 7.0%未満が理想(最大でも8.0%以下) |
※急激なコントロール改善は低血糖リスクがあるため、主治医と相談しながら段階的に管理しましょう。
4. 術前・術後の注意点
✅ 術前に行うべきこと
- 内科主治医による血糖コントロール
- 感染症(歯科、泌尿器など)のチェックと除菌
- 栄養状態(低アルブミン)にも注意
✅ 術後のポイント
- 創部の観察と適切なドレッシング管理
- 抗菌薬の適正使用と感染予防
- 血糖値の管理の徹底(特に入院中)
5. 糖尿病患者における人工膝関節置換術のメリット
適切な準備を行えば、糖尿病を有する患者さんでも人工膝関節置換術により以下のようなメリットを享受できます。
- 膝の痛みの軽減
- 歩行能力・生活の質(QOL)の改善
- 糖尿病そのものの運動療法への前向きな影響
6. 参考文献
・Kamath AF, et al. Impact of diabetes mellitus on perioperative outcomes after total knee arthroplasty. J Bone Joint Surg Am. 2015;97(13):1042-1049.
→ 糖尿病のある患者では、TKA後の感染・再手術率が増加することを示唆。
・Chrastil J, Anderson MB, et al. How does diabetes affect outcomes after total joint arthroplasty?. J Arthroplasty. 2015;30(9):1315–1318.
→ 術前血糖コントロールの適正化が、TKAの安全性向上に重要であることが示されています。
7. まとめ|糖尿病があっても人工膝関節置換術は可能です
糖尿病があるからといって、人工膝関節置換術が受けられないわけではありません。
ただし、術前からの血糖コントロールと術後管理が極めて重要です。
糖尿病がしっかりとコントロールされていない状態では手術が出来ません。
たまに、外来の患者さんで「血糖値が高めですけど、手術出来ませんか?」と言ってこられる方がいますが、血糖コントロールが悪い場合には手術が出来ません。
合併症が起きてからでは遅いので、確実に血糖値がコントロールされている状態になってから手術を行うようにしています。
糖尿病って本当に甘くみれないですからね!
おわかりいただけましたでしょうか?
よろしくお願いいたしますね!
では、また!!
人工膝関節置換術を受けるには血糖値をしっかりコントロールすることがとても重要!

「いやいや白目!!」
いつか記者会見をすることになるかもしれないという妄想をしたりしている整形外科医の塗山でした!
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医
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