おはようございます!
自分の神経は大事にしていきたい塗山です。
痺れ反対!!
今回のテーマは、
人工股関節置換術と外側大腿皮神経障害についてです。
人工股関節置換術後に太もものしびれ?|外側大腿皮神経障害の原因と対処法
こんにちは~~!!整形外科医の塗山正宏ですよ~~!!
人工股関節置換術(THA:Total hip arthroplasty)は、変形性股関節症などの疾患に対して非常に有効な治療法です。
しかし、術後の合併症として「太ももの外側がしびれる・ピリピリする」と訴える患者さんがいらっしゃいます。
この症状、実は「外側大腿皮神経障害(Lateral femoral cutaneous nerve neuropathy)」かもしれません。
この記事では、
- 外側大腿皮神経とは何か
- なぜ人工股関節置換術で障害されるのか
- 症状・診断・対処法
を、整形外科医の塗山正宏が文献をもとに笑顔で解説していきます。
🔍 外側大腿皮神経とは?
外側大腿皮神経(Lateral Femoral Cutaneous Nerve:LFCN)は、腰椎(L2〜L3)から出て、鼠径靱帯のすぐ下を通って大腿外側の皮膚に感覚を送る神経です。
▶ 役割:
- 太ももの外側(特に前方〜中部)の皮膚感覚を支配
- 運動神経ではない(筋肉は動かさない)
🩺 外側大腿皮神経障害の原因:なぜ人工股関節置換術で障害されるのか?
人工股関節置換術では、前方アプローチ(DAA: Direct Anterior Approach)が選択されることがあります。
このとき、鼠径部の近くを走る外側大腿皮神経が牽引・圧迫・損傷されるリスクがあるのです。
📘 Goulding K et al. (2010). J Arthroplasty; 25(6 Suppl):114–117.
→ 前方アプローチによるTHAでは外側大腿皮神経障害の発生率が最大81%と報告。
主な原因:
- 手術中の牽引操作(特に前方アプローチ)
- 器械による圧迫(開創器など)
- 術後の皮下出血や浮腫による圧迫
- 患者さんの解剖学的バリエーション(外側大腿皮神経の走行位置)
🧠 外側大腿皮神経障害の主な症状
症状 | 内容 |
---|---|
感覚異常 | 太ももの外側の「しびれ」「ピリピリ」「ヒリヒリ感」 |
感覚鈍麻 | 触っても鈍い、感覚がない |
疼痛 | チクチクするような灼熱痛(神経障害性疼痛) |
※通常、運動麻痺は伴いません。
🧪 診断方法
- 問診と触診:術後に発生した外側大腿部の感覚異常があれば疑う
- チネル徴候(Tinel’s sign):鼠径靱帯外側で叩打すると症状が誘発される
- 神経伝導検査(必要時):外側大腿皮神経の伝導ブロックを確認
- MRI・超音波:他の病変(血腫など)の鑑別目的で使用
🛠️ 治療法・対処法
✅ 保存療法(まずはこちら)
- 神経障害性疼痛に対するプレガバリンやデュロキセチンなどの内服
- 安静と患部保護
- 物理療法(超音波・温熱療法)
📘 Cherian JJ et al. (2016). Clin Orthop Relat Res. 474(5):1158–1163.
→ 多くの症例では6〜12か月以内に自然軽快。
✅ 神経ブロック(症状が強い場合)
- 局所麻酔薬+ステロイドを外側大腿皮神経近傍に注射
✅ 手術(ごくまれ)
- 難治性で日常生活に著しい支障がある場合に、神経切除や神経剥離術を検討
🔄 予防するには?
- 術中の牽引や開創器の位置に注意
- 患者さんの解剖学的バリエーションの把握
- 前方アプローチ(DAA)選択時はリスクの説明を事前に行う
📈 まとめ
ほとんどは保存的治療で軽快するため、必要以上に心配する必要はありませんが、強い症状には早めの対応が重要です。
人工股関節置換術後の「太もものしびれ」は、外側大腿皮神経障害が原因かもしれません。
特に前方アプローチ(DAA)では発症率が高いことが知られています。
私自身は外側大腿皮神経障害のリスクが低い前外側アプローチ(ALS)で人工股関節置換術を行っています。
同じ前方系アプローチではありますが、やはり神経障害のリスクが低い手術方法のほうが良いですよね。
以上、参考になりましたでしょうか?
では、さらば!
人工股関節置換術で前方アプローチの場合、外側大腿皮神経障害によるしびれが出る事あり!

「呼んだ?」
来世はかわいい犬に生まれ変わるかもしれない整形外科医の塗山正宏でした!
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医
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