おはようございます!
一日立ちっぱなしだと脚が浮腫む気がする塗山です。
今回のテーマは、
人工膝関節置換術後の浮腫についてです。

塗山先生
脚が浮腫んだりしてませんか?

みずえさん
最近、浮腫みがひどいのよ…
人工膝関節置換術後の浮腫について
こんにちは。整形外科医の塗山正宏です。
人工膝関節置換術(TKA:Total Knee Arthroplasty)は、変形性膝関節症や関節リウマチなどにより重度の関節障害を抱える患者さんに有効な治療法です。
術後の回復過程においてよくみられる症状のひとつが膝や下肢の浮腫(むくみ)です。
今回は、人工膝関節置換術後に生じる浮腫の原因・経過・対処法について整形外科医の塗山正宏がたとえこの記事を読むのが10人だとしても魂を込めて解説します!
1. 人工膝関節置換術後に浮腫が起こる原因
術後の浮腫にはいくつかの要因があります。
- 手術侵襲による炎症反応
人工膝関節置換術は大きな関節手術であり、皮膚・筋肉・骨・血管などに外科的操作が加わるため、炎症反応として浮腫が生じます。 - 血液循環やリンパ流の停滞
術後は安静時間が長くなるため、下肢の血流やリンパの流れが滞り、むくみが出やすくなります。 - 静脈血栓症との関連
一部の症例では深部静脈血栓症(DVT)が原因で浮腫が起こる可能性があります。術後の浮腫が強い場合には、深部静脈血栓症を除外することが重要です。 - リハビリ初期の運動不足
筋肉のポンプ作用が弱まると、下肢の静脈還流が低下し浮腫が助長されます。
2. 浮腫の経過
- 術後1〜4週間:炎症や血管透過性亢進の影響で強い浮腫が出やすい時期。
- 術後1〜3か月:徐々に炎症は落ち着き、リハビリによる歩行や筋活動が増えることで改善していきます。
- 術後3~6か月:まだ活動量が増えると浮腫が出る可能性があります。
- 術後6か月〜1年:多くの患者さんで浮腫は軽快し、術前よりも膝の機能は安定します。
3. 浮腫に対する対処法
- 下肢挙上(Elevation)
安静時には足を心臓より高く上げることで静脈還流を促進します。 - 弾性ストッキングや弾性包帯
静脈血栓症の予防や浮腫の軽減に有効です。 - 冷却療法(アイシング)
炎症や腫脹を抑える目的で有効ですが、過度な冷却は避けましょう。 - リハビリテーション
足関節の運動や膝関節周囲筋の収縮により筋ポンプ作用を活性化し、浮腫を改善します。 - 薬物療法
必要に応じて利尿薬や抗凝固薬の投与が行われることがありますが、必ず医師の判断のもとで使用されます。
4. 文献紹介
- Harsten A, et al. Postoperative swelling after total knee arthroplasty: prospective study of 187 patients with ultrasound follow-up. Acta Orthop. 2015;86(2):195-201.
- Yamaguchi T, et al. Influence of postoperative swelling on functional recovery after total knee arthroplasty. J Arthroplasty. 2018;33(7):2112-2119.
- Kim JH, et al. Risk factors of persistent leg swelling after total knee arthroplasty and its impact on functional outcome. Clin Orthop Surg. 2020;12(3):321-329.
これらの研究では、人工膝関節置換術後の浮腫は多くの患者に認められる一過性の変化であること、そして適切なリハビリと管理により改善することが示されています。
5. まとめ
人工膝関節置換術後の浮腫は、殆どの患者さんが経験する症状です。
主に炎症や循環障害が原因ですが、ほとんどの場合は時間の経過とリハビリにより改善していきます。
ただし、急激な腫れや痛みを伴う場合には血栓症の可能性もあるため、主治医に相談することが大切です。
安心してリハビリを続け、徐々に快適な歩行を取り戻していきましょう。
以上、参考になりましたでしょうか!?
では、さらば!
人工膝関節置換術は浮腫が出ますが、時間の経過と共に改善していきます。

「お月様~~!」
いつか月面着陸をしたいと思っている整形外科医の塗山正宏でした!
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医


コメント