おはようございます!
左肩の脱臼を経験したことがある塗山です。
今回のテーマは、
人工股関節置換術後の脱臼肢位についてです。

人工股関節は脱臼という合併症があるんです。

詳しく教えてほしいわ…
人工股関節置換術後の脱臼肢位について
どーも、整形外科医の塗山正宏です。
今日は股関節トークをしていきますよ!
人工股関節置換術(THA: Total Hip Arthroplasty)は、変形性股関節症や股関節骨折などの疾患に対して高い成功率を誇る手術です。
しかし、術後の合併症として人工股関節の脱臼が発生することがあります。
脱臼は患者さんの生活の質(QOL)に深刻な影響を与えるため、脱臼についての予防策や注意事項を理解することが重要です。
本記事では、特に「脱臼肢位」に焦点を当て、整形外科医塗山が笑顔で解説します。
脱臼の原因とリスク因子
術後の股関節脱臼は、次のような要因によって引き起こされる可能性があります。
1. 手術の技術的要因
- 人工股関節の設置角度(カップの設置角度、ステムの設置位置)が不適切な場合。
- 軟部組織のバランスが十分に保たれていない場合。
2. 患者さんの要因
- 高齢、肥満、筋力低下。
- 脳血管障害や認知機能の低下。
3. 動作や姿勢の問題
- 過度の股関節屈曲や伸展などの動き。
- 股関節の内転+内旋、内転+外旋の動きが過剰に起きる動き。
脱臼肢位とは?
脱臼肢位は、人工股関節が脱臼しやすい特定の姿勢や動作を指します。以下が典型的な例です。
1. 後方脱臼
最も一般的な脱臼形態で、次のような姿勢で発生しやすいです:屈曲+内転+内旋
- 股関節の屈曲90度以上
- 内旋(膝を内側に寄せる動き)
- 内転(脚を中央に寄せる動き)
2. 前方脱臼
比較的少ないが、以下の姿勢で発生する可能性があります:伸展+内転+外旋
- 股関節の伸展
- 外旋(膝を外側に広げる動き)
- 内転(脚を中央に寄せる動き)
術後の注意事項
術後に脱臼肢位を避けるためのポイントを以下にまとめました。
特に術後3か月以内は脱臼の発生リスクが高い時期なので要注意です。
1. 日常生活での動作注意
- 深くしゃがむ動作や低い椅子への座位を避ける。
- 靴下を履く際は、股関節を過度に屈曲させない。
2. 寝る姿勢の工夫
- 仰向けで寝る際、股関節の内旋を防ぐため枕やクッションを膝の間に挟む。
3. リハビリテーション
- 術後の筋力強化により、関節の安定性を高める。
- 理学療法士の指導のもと、正しい動作を学ぶ。
文献紹介
- Lewinnek GE, et al. (1978). “Dislocations after total hip-replacement arthroplasties”.
- 人工股関節脱臼のリスクと対策についての古典的研究で、カップ設置角度が脱臼率に与える影響を示しています。
- Yoon TR, et al. (2018). “Risk factors associated with dislocation after total hip arthroplasty”.
- 脱臼リスクを減少させるための最新の戦略を検討した研究。
- Biedermann R, et al. (2005). “Reducing the risk of dislocation after total hip arthroplasty”.
- 術後脱臼の予防に役立つ姿勢とリハビリの重要性を強調した文献。
- Sierra RJ, et al. (2009). “The impact of surgical approach on hip stability in THA”.
- 手術アプローチ(前方、後方、側方)の違いが股関節安定性に与える影響を調査した研究。
脱臼肢位の例
以下の画像は、脱臼しやすい典型的な肢位を示したものです。


まとめ
人工股関節置換術後の脱臼肢位を理解し、日常生活で適切な動作を心がけることは、脱臼リスクの低減に直結します。
患者さん個々で脱臼リスクは変わりますので、生活スタイルに応じた指導とリハビリテーションが、術後の快適な生活をサポートします。
人工股関節の術後早期はとにかく脱臼に気をつけて生活しましょう!
気をつけるに越したことありませんからね!
うっかりしちゃだめですよ!
約束ですよ!(笑顔)
人工股関節の手術後早期は脱臼肢位に気をつけて生活していきましょう!

「カロリーの王様!」
たまに二郎系ラーメンを食べたくなるけど結局食べないで終わる整形外科医の塗山正宏でした!
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医
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