おはようございます!
将来は禿げたらカツラをかぶろうと思っている塗山です。
今回のテーマは、
人工股関節置換術後感染の治療についてです。

人工股関節の感染って一番怖い合併症なんですよ…

感染症って聞くだけでも本当に怖いです…
人工股関節置換術後感染の治療
こんにちは~、整形外科医の塗山正宏で~す。
今日も真面目な顔して語っていきます!
人工股関節置換術(THA:Total hip arthroplasty)は、変形性股関節症や関節リウマチなどによる股関節痛を軽減し、機能を改善するために広く行われている手術です。
しかし、まれに術後感染が発生し、その治療は整形外科医にとって非常に困難な課題です。
この記事では、人工股関節置換術後感染の原因、診断、治療法について、最新のエビデンスを基に塗山が厳しい顔で解説します。
1.人工股関節置換術後感染の原因
術後感染は、主に手術中の細菌侵入や術後の創部感染が原因です。
病原体としては、黄色ブドウ球菌(MRSA:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌などもあり)やグラム陰性菌が多く報告されています。
感染リスク因子としては、糖尿病、肥満、免疫抑制状態、既往感染症など色々な要因が挙げられます(Parvizi et al., 2018)。
特に術後早期感染と遅発性感染では、その発生機序や特徴が異なり、適切な対応が求められます。
2.感染リスクの評価と予防策
人工股関節置換術後感染のリスク評価は、術前から徹底する必要があります。
以下は感染リスクを低減するための代表的な取り組みです。
- 術前スクリーニングと除菌対策
- 鼻腔内のMRSAキャリアに対して、ムピロシン軟膏を使用し除菌を行う場合あり。
- 術前の血糖コントロールが不十分である場合、血糖値が安定するまで手術を延期する。
- 術中無菌操作の徹底
- 手術室の空調管理、術者の手指衛生、周術期の抗菌薬投与などがあります。
- 手術室の空調管理、術者の手指衛生、周術期の抗菌薬投与などがあります。
- 術後管理の徹底
- 創部の清潔保持、創部の感染徴候の出現の有無の経過観察が重要です。
- 創部の清潔保持、創部の感染徴候の出現の有無の経過観察が重要です。
3.診断方法
感染の診断には、臨床症状、炎症マーカー(CRP)の上昇、関節液穿刺による培養検査が有用です。
近年では、α-ディフェンシン検査が高感度・高特異度を示す診断法として注目されています(Shahi et al., 2017)。
また、画像検査としてはMRIやFDG-PETが有用であり、感染範囲や病変部位の評価に役立ちます。
特に慢性期感染では、関節液の検査やPCR検査が補助的に利用されることがあります。
4.治療法
人工股関節置換術後感染の治療法は、感染の経過や重症度に応じて異なります。
主な治療法として以下の3つが挙げられます。
- デブリードマンおよびインプラント温存(DAIR)
- 初期感染に適用され、インプラントを温存しつつ感染巣を除去します。抗菌薬含有セメントビーズの留置も効果的な場合があります(Zimmerli et al., 2004)。
- 抗菌薬治療は最低でも通常4〜6週間(さらに長期になる場合もあり)に及び、培養結果に基づき薬剤を選択します。
- 一期的再置換術
- 感染巣を徹底的にデブリードマンし、新たなインプラントに置換する方法です。手術時間や患者さんの負担が少ない一方、再感染リスクが問題となります。
- 抗菌薬の全身投与と局所投与を組み合わせることで、治療効果を高めます。
- 二期的再置換術
- 感染制御後に再置換を行う方法で、感染制御率が高いと報告されています。スペーサーを一時的に挿入することで脚短縮を防ぎます。
- 抗菌薬含有スペーサーを使用することで、局所感染の抑制と機能維持を図ります。
5.予後と再発予防
適切な治療を行っても、再感染率は依然として5〜10%と報告されており、治療に難渋する事が少なくありません。
感染予防として、術前スクリーニング、術中無菌操作、術後の管理が重要です。
また、術後の定期フォローアップにおいては、感染徴候の有無をモニタリングし、早期発見に努める必要があります。
6.参考文献
・Jiranek WA, et al. (2006). Surgical Treatment of Prosthetic Joint Infection. J Am Acad Orthop Surg.
・Parvizi J, Gehrke T, et al. (2018). Proceedings of the International Consensus Meeting on Periprosthetic Joint Infection. J Arthroplasty.
・Shahi A, et al. (2017). Alpha-Defensin Test for Periprosthetic Joint Infection: A Meta-Analysis. J Bone Joint Surg Am.
・Zimmerli W, et al. (2004). Prosthetic-Joint Infections. N Engl J Med.
7.まとめ
人工股関節置換術後感染は、人工関節手術における重大な合併症であり、その治療には多面的なアプローチが求められます。
適切な予防策を講じ、迅速かつ的確な診断と治療を行うことで、患者さんの機能回復を最大限にサポートできます。
しかし、適切な予防策を講じても、一定の確率で発症してしまうのが術後感染症なのがやっかいなところです。
100%、術後感染症を予防するのは今の医療では不可能なのです。
悲しいですが、どうしても一定の確率で起きてしまいますね…涙。
これからも感染管理を徹底し、術後感染症が起きないように私は頑張っていきますよ!
では、また!!
人工股関節置換術の術後感染症は治療に難渋する可能性があるので本当に怖い!

「公園の遊具でたまには遊びたい!!」
たまには無邪気に公園ではしゃぎたい整形外科医の塗山正宏でした。
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医
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