おはようございます!
目玉焼きは割と好きな塗山です。
今回のテーマは、
変形性股関節症と轢音についてです。

轢音と書いて「れきおん」って読みますよ。

難しい言葉ですね…
変形性股関節症と轢音:その関係と注意点について解説
はじめに
え~っと、整形外科医の塗山正宏です!
今日は股関節のお話ですのでよろしくお願いします。
変形性股関節症(hip osteoarthritis)は、関節軟骨の変性により疼痛や可動域制限を生じる股関節の慢性疾患です。
日常生活における股関節の動作で「コキッ」や「ゴリゴリ」といった轢音(クリック音・摩擦音)を感じた経験はありませんか?
本記事では、「変形性股関節症と轢音の関係」に焦点を当て、考えられる原因や注意すべきポイント、そして必要な対応について、最新の知見をもとに塗山がこっそりと解説します。
1. 変形性股関節症と轢音とは?
1-1. 変形性股関節症とは
変形性股関節症は、関節軟骨の摩耗、関節唇の損傷、骨棘形成などによって関節の構造が変化し、関節痛、可動域制限、跛行などが生じる疾患です。
特に日本では、発育性股関節形成不全や寛骨臼形成不全に起因する二次性変形性股関節症の割合が高いと報告されています(Yoshimura et al., 2009)。
1-2. 轢音とは?
轢音(れきおん)は、関節を動かしたときに発生する「音や振動」のことで、英語では crepitus(クリーピタス)と呼ばれます。股関節においては以下のような音として自覚されます。
- 「コキッ」「ポキッ」:軽いクリック音
- 「ゴリゴリ」「ミシミシ」:摩擦音や重い音
- 「ググッ」「引っかかるような感覚」:クリック+可動域制限

2. 股関節の轢音の原因
2-1. 関節軟骨の摩耗・骨棘形成
関節軟骨が摩耗し、滑らかさを失うことで骨同士が擦れると、摩擦音が発生します。
また、寛骨臼縁に形成された骨棘(こつきょく)が動作時にぶつかることで「ゴリゴリ」「ミシッ」といった音が出ることもあります(Hunter et al., 2008)。
2-2. 関節唇損傷・インピンジメント
股関節の前方にある関節唇が損傷したり、大腿骨寛骨臼インピンジメント(Femoroacetabular impingement:FAI)のように骨の変形が関節唇を引っかけることで、「クリック音」が発生します。
これは特に屈曲・内旋時に多く見られます(Ganz et al., 2003)。
2-3. 腱の弾発現象(スナッピングヒップ)
腸腰筋や大腿筋膜張筋が大転子や骨盤と擦れ合うことで起こる弾発音も、轢音の原因です。
これは筋肉や腱などの軟部組織由来の問題であり、変形性股関節症とは別の原因ですが、合併していることもあります(Allen et al., 2004)。
3. 轢音がある場合に注意すべきこと
3-1. 痛みの有無が重要
轢音があっても痛みがなければ生理的な音である可能性が高く、特に治療の対象とはなりません。
ただし、以下のような場合は注意が必要です。
- 音と同時に痛みや違和感がある
- 音の頻度や強さが急に増加した
- 動きが引っかかる・止まるような感じがある
- 歩行時や階段昇降時に力が入らない
3-2. 症状が進行しているサインかも
変形性股関節症の進行に伴い、可動域の制限や軟骨の変性が悪化することで、轢音の頻度や強さが増す傾向があります。
音が気になる+痛みがある場合は、画像検査(X線、MRIなど)による評価が望ましいです。
4. 轢音のある患者への対処法・アドバイス
4-1. 保存療法の継続
以下のような保存療法を行うことで、関節周囲の柔軟性や安定性を高め、轢音の軽減につながる可能性があります。
- 股関節周囲筋のストレッチ・筋トレ
- 中殿筋、大殿筋、腸腰筋のバランスを整える
- 過体重のコントロール
- 体重減少により関節への圧力を軽減
- 温熱療法・運動療法
- 血流改善と可動域維持が目的
4-2. 症状が進行している場合は手術を検討
- 骨棘形成や重度の関節唇損傷、FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)などが認められ、日常生活に支障をきたす場合は関節鏡手術や人工股関節置換術が検討されます(Clohisy et al., 2009)。
5. 参考文献
- Yoshimura N, et al. (2009). “Epidemiology of hip osteoarthritis in Japan.” Mod Rheumatol.
- 日本における変形性股関節症の発症率と危険因子について報告。
- Hunter DJ, et al. (2008). “Structural correlates of pain in osteoarthritis: insights from imaging studies.” Clin Exp Rheumatol.
- 関節構造の変化(骨棘、関節裂隙の狭小化)が疼痛と関連することを示す。
- Ganz R, et al. (2003). “Femoroacetabular impingement: a cause for osteoarthritis of the hip.” Clin Orthop Relat Res.
- 股関節インピンジメントが関節唇損傷と軟骨損傷を引き起こし、轢音の原因になることを提唱。
- Allen WC, et al. (2004). “Snapping hip: a review of diagnosis and treatment.” J Am Acad Orthop Surg.
- 弾発股のメカニズム、鑑別方法、保存療法と手術療法を詳述。
- Clohisy JC, et al. (2009). “Surgical treatment of femoroacetabular impingement: a systematic review.” Clin Orthop Relat Res.
- FAIの外科的治療に関するエビデンスレビュー。関節唇損傷とクリック音の関連についても記載。
- FAIの外科的治療に関するエビデンスレビュー。関節唇損傷とクリック音の関連についても記載。
6. まとめ
変形性股関節症では、関節の変性によりクリック音や摩擦音(轢音)が起こることがあります。
轢音の原因には、軟骨摩耗、骨棘、関節唇損傷、腱の弾発などがあります。
痛みを伴う轢音は進行のサインであり、専門医への相談が望ましいですね。
ストレッチや筋トレなどの保存療法で改善することもありますが、進行例では、手術的治療を検討しましょう。
股関節からの音に気づいたら、それがただの「音」なのか、「治療が必要なサイン」なのかを見極めることが重要です。
以上、参考になりましたでしょうか?
では、また!
股関節に轢音がし始めたら要注意!まずは検査を!

「高校野球って良いですよね!」
来世は高校野球児として甲子園で活躍する予定の整形外科医の塗山正宏でした!
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医
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