おはようございます!
お箸よりもハンマーを持つ時間のほうが長い塗山です。
今回のテーマは、
変形性股関節症と骨嚢胞についてです。

骨嚢胞って知ってますか?

いや、知りまへん。
変形性股関節症と骨嚢胞|原因・症状・治療法を整形外科医が解説
1. はじめに
変形性股関節症は、中高年に多く見られる股関節の変性疾患であり、軟骨の摩耗や骨の変形により、痛みや可動域制限、歩行障害を引き起こします。
その中で画像診断(特にMRIやCT)でよく認められる所見のひとつが「骨嚢胞(bone cyst)」です。
患者さんからは、
- 「骨嚢胞って腫瘍ですか?」
- 「骨に穴が空いていると言われて不安」
- 「手術が必要なのか?」
といったご質問をいただくことが少なくありません。
本記事では、変形性股関節症に伴う骨嚢胞の意味・原因・症状・治療法について、整形外科医塗山が魂を込めて全力で解説します。
2. 骨嚢胞とは?
骨嚢胞とは、骨の内部に液体やゼリー状の物質がたまった袋状の病変です。
変形性股関節症では、関節軟骨が摩耗し、関節に加わる力が骨に集中することで、骨の一部に小さな穴が形成され、そこに関節液が入り込むことで生じます。
- 好発部位:大腿骨頭や臼蓋(骨盤側)
- 大きさ:数ミリ〜数センチ
- 発生頻度:進行期~末期の変形性股関節症で認められることが多い
腫瘍性ではなく、良性変化であることが多いため、骨嚢胞そのものが直接「がん」につながる心配はほとんどありません。
3. 骨嚢胞ができる原因
- 軟骨摩耗による関節液の侵入
軟骨の損傷部位から関節液が骨内に入り込み嚢胞を形成します。 - 微小骨折の修復過程
骨に繰り返しストレスが加わり、微細な骨折が起こり、それを修復する過程で嚢胞化することがあります。 - 関節内圧の上昇
炎症や変形で関節内圧が上がることで、骨の脆弱な部分に嚢胞が生じやすくなります。
4. 骨嚢胞の症状
実は、骨嚢胞そのものが直接痛みを引き起こすことは少ないです。
しかし、骨嚢胞が大きくなると以下のような影響を及ぼすことがあります。
- 大腿骨頭の支持力低下(潰れやすくなる)
- 股関節痛の悪化
- 関節変形の進行促進
つまり、「骨嚢胞=痛みの原因」とは限りませんが、股関節症の進行を反映するサインと考えられています。
5. 診断方法
- X線(レントゲン): 骨の中に円形・楕円形の透亮像として見える
- MRI: 嚢胞の内容液や周囲の骨浮腫を評価可能
- CT: 骨嚢胞の大きさや骨質の状態を詳細に確認できる
特にMRIは早期診断に有用で、進行度や手術適応を判断する上で重要です。
6. 治療法
保存療法
基本的には変形性股関節症に対する保存療法になります。
- 鎮痛薬(NSAIDs)
- 股関節の負担を減らす生活指導(体重管理・杖の使用)
- 筋力トレーニング(中殿筋・大腿四頭筋強化)
骨嚢胞があっても痛みが軽度であれば、保存療法で経過観察することが可能です。
手術療法
骨嚢胞が大きく、股関節の支持性が損なわれている場合、あるいは進行期~末期の股関節症では手術が検討されます。
- 人工股関節置換術(THA):痛みや可動域制限が強い場合の最終的治療
7. 文献での知見
- Resnick D, et al. Radiology. 1977;122(1):123-129.
変形性股関節症における骨嚢胞は、関節液の侵入や微小骨折によって形成されると報告。 - Ledin H, et al. Osteoarthritis Cartilage. 2012;20(6):559-563.
骨嚢胞の存在は股関節症の進行度と関連しており、手術適応の判断材料となる。 - Nakamura J, et al. J Orthop Sci. 2017;22(2):247-252.
MRIでの骨嚢胞の評価は、将来的な関節機能低下の予測に有用。
8. まとめ
骨嚢胞は変形性股関節症に伴ってよく見られる骨の変化であり、腫瘍ではなく良性所見です。
直接の痛みの原因ではありませんが、関節の変形や進行を反映するサインとなります。
診断にはCTやMRIが有用です。
治療は変形性股関節症に対しての保存療法から開始し、重度の場合は手術(人工股関節置換術)が検討されます。
股関節に痛みや違和感があり「骨嚢胞があると言われた」と不安を抱える方は、自己判断せず整形外科専門医に相談しましょう!
ひとりで悩まないで!
以上、参考になりましたでしょうか!?
では、さらば!
変形性股関節症の進行と共に骨嚢胞が出現してくる。

「シャカシャカシャカ!」
休日は屋台で焼きそばを焼きたい派の整形外科医の塗山正宏でした!
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医


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