膝関節208 人工膝関節置換術と膝蓋骨骨折

膝関節

おはようございます!
おじいちゃんになってから骨折はしたくない塗山です。








今回のテーマは、


人工膝関節置換術と膝蓋骨骨折についてです。






塗山先生
塗山先生

骨折って怖いですよね…

骨は折りたくはないわ…


こんにちは!整形外科医の塗山正宏です。

人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty:TKA)は、変形性膝関節症に対する標準的かつ効果的な手術ですが、まれに起こり得る合併症として「膝蓋骨骨折」があります。

この記事では、人工膝関節置換術と膝蓋骨骨折の関係性について、整形外科医の塗山正宏が文献をもとに詳しく解説し、予防や治療の観点からのアドバイスをお届けします。



✅ 膝蓋骨骨折とは?

膝蓋骨(しつがいこつ)は膝前面にある「お皿の骨」で、膝関節の伸展機構の中枢です。

ここが骨折すると、膝の伸展(膝を伸ばす)が困難となり、歩行能力が大きく損なわれます。

人工膝関節置換術後に発生する膝蓋骨骨折は、次のような原因で生じます。



🔍 なぜ人工膝関節置換術後に膝蓋骨骨折が起こるのか?

① 血流障害

人工膝関節手術の際、膝蓋骨周囲の軟部組織(特に内側膝蓋動脈)の切離により、骨への血流が低下し脆弱化することがあります。

📘 Ortiguera CJ, Berry DJ. Patellar fracture after total knee arthroplasty. Clin Orthop Relat Res. 2002;(404):111-6.
👉 膝蓋骨骨折のリスク因子として、血流障害が大きく関与していると報告。

② 膝蓋骨の骨切除(リサーフェシング)

膝蓋骨に人工関節コンポーネントを設置する場合、骨の厚みが減少し、術後のストレスで骨折することがあります。

③ 外傷・転倒

術後早期のリハビリ中や退院後の転倒によって、膝蓋骨に直接的な外力が加わり骨折するケース。




📊 発生頻度と予後

膝蓋骨骨折の発生頻度は0.2〜1.2%程度とされていますが、治療が難渋することもあります。

症例対応
骨折部がずれていない(非転位)保存療法(装具・免荷)で治癒可能
骨片がずれている or 伸展不能手術が必要

📘 Bourne RB et al. The patella in total knee arthroplasty. Clin Orthop Relat Res. 2001;(389):91-9.




🧠 膝蓋骨骨折を防ぐには?

✅ 手術中の配慮

  • 膝蓋骨の過剰な切除を避ける
  • 血流温存のため、外側進入や軟部組織温存の工夫

✅ 術後の注意点

  • リハビリ初期には転倒に注意
  • 階段昇降や膝立ち動作には十分な可動域と筋力回復が必要




🔧 治療の流れと再手術の可能性

膝蓋骨骨折の治療はケースによって異なります。

治療法適応
保存療法骨折が安定しており、伸展可能な場合
骨接合術(内固定術)骨片の転位があるが、再建可能な場合
膝蓋骨切除重度の粉砕骨折や偽関節形成など

📘 Mont MA et al. Management of patellar fractures after TKA. J Arthroplasty. 2010;25(8):1211-1217.



📝 まとめ:小さな骨でも大きな影響

人工膝関節置換術後の膝蓋骨骨折はまれな合併症になりますが、膝蓋骨骨折が起きると膝関節機能の低下が起きます。

血流障害、過剰な骨切除、外傷などが主な原因になります。

保存療法と手術療法は骨折の状態に応じて判断します。

手術療法は感染リスクがあるので慎重に判断する必要があります。

人工膝関節置換術後の工夫と術後管理で骨折リスクを最小限にすることが重要です。

以上、参考になれば幸いです!

では、また!


人工膝関節置換術後の膝蓋骨骨折が起きると膝関節機能が落ちるので要注意!

さる

「見ざる聞かざる言わざる!!」


見て聞いて言うタイプの整形外科医の塗山正宏でした!


【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医

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