股関節336 人工股関節置換術と術前中止薬

術前中止薬 股関節

おはようございます!
そばよりもラーメン派だと言い続けている塗山です。





今回のテーマは、

人工股関節置換術と術前中止薬についてです。






塗山先生
塗山先生

手術前に中止したほうが良い薬があります。

あみこさん
あみこさん

それは知りたいわ。



どーもっす!整形外科医の塗山正宏です。

今日も股関節についてのトークを繰り広げていきますよ。

人工股関節置換術(THA:Total hip arthroplasty)は、変形性股関節症や関節リウマチなどに対する有効な手術ですが、手術前後の薬剤管理は合併症リスクを抑えるために非常に重要です。

特に抗血栓薬免疫抑制剤などの一部の薬剤は、出血リスクや感染リスクを考慮して術前に中止する必要があります。

この記事では、人工股関節置換術の際に考慮すべき術前中止薬について、最新のガイドラインを基に塗山が笑顔で優しく詳しく解説していきます。


1. 術前に中止が必要な薬剤

(1) 抗血栓薬(抗凝固薬・抗血小板薬)

抗血栓薬は血栓塞栓症の予防に重要ですが、手術時の出血リスクを増大させるため、適切なタイミングで中止が求められます。

  • ワルファリン: 一般的に手術の5日前に中止し、PT-INRを確認。ブリッジング療法として、低分子ヘパリン(LMWH)を使用することもある。

  • DOAC(直接経口抗凝固薬:ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバンなど): 腎機能によって異なるが、通常2〜3日前に中止。腎機能低下している患者さんの場合にはでは4日前の中止を検討する。

  • 抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレル): 一般的に術前7日程度の中止が推奨されるが、心血管疾患のリスクが高い場合は継続を検討。特にステント留置後の患者さんでは、主治医と相談が必要です。

最近では抗血栓薬を中止せずに継続したまま手術を行う病院が以前よりも増えていると思います。

人工股関節置換術は抗凝固薬を必ず中止しなければできない手術ではないと思いますので、そのあたりは主治医と要相談になります。


(2) 抗リウマチ薬(DMARDs, 生物学的製剤)

関節リウマチ患者では、生物学的製剤や免疫抑制薬が感染リスクを高めるため、手術前に一時的に中止します。

  • メトトレキサート: 一般的に継続可能とされるが、感染リスクが高い場合や内服量が多い場合には減量または手術前1週間に中止を検討します。

  • TNF阻害剤(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブなど): 最終投与から1〜4週間前に中止(薬剤の半減期に依存)。

  • JAK阻害剤(トファシチニブ、バリシチニブなど): 3日前に中止することが推奨される。

  • IL-6阻害剤(トシリズマブ、サリルマブ): 最終投与から4週間前の中止が望ましい。


(3) SGLT2阻害薬(糖尿病治療薬)

SGLT2阻害薬は術後のケトアシドーシスリスクを高めるため、術前3日前には中止することが推奨されています(Goldenberg et al., 2019)。

(4) ホルモン療法

  • エストロゲン製剤(経口避妊薬、ホルモン補充療法): 血栓リスクを考慮し、手術の4週間前に中止するのが望ましい。


2. 術前に継続すべき薬剤

(1) 高血圧治療薬

  • β遮断薬(メトプロロール、ビソプロロールなど): 急な中止は術後心血管イベントのリスクを高めるため、継続が推奨される。

  • ARB/ACE阻害薬: 低血圧リスクがあるため、手術当日の朝は休薬することが多い。

  • カルシウム拮抗薬: 継続可能。


(2) 甲状腺ホルモン製剤

  • レボチロキシン: 手術前後も継続可能。

(3) ステロイド

  • 慢性ステロイド使用患者では、副腎不全を防ぐため、術前も継続し、必要に応じてステロイドカバーを考慮する。

(4) 抗うつ薬・抗精神病薬

  • SSRIやSNRIは術前に継続可能だが、出血リスクを増加させる可能性があるため、必要に応じて調整。




3.参考文献

Douketis JD, et al. (2022). Perioperative Management of Antithrombotic Therapy: An American College of Chest Physicians Clinical Practice Guideline. Chest.

Goldenberg RM, et al. (2019). SGLT2 inhibitors and perioperative considerations: A review of current evidence and recommendations. Canadian Journal of Diabetes.

Baron TH, et al. (2013). Managing antithrombotic therapy before and after GI endoscopy. Gastroenterology.

Goodman SM, et al. (2020). American College of Rheumatology guideline for perioperative management of antirheumatic medication in patients with rheumatic diseases undergoing elective orthopedic surgery. Arthritis Care & Research.


4. まとめ

人工股関節置換術における術前の薬剤管理は、出血リスクと感染リスクをバランスよく考慮する必要があります。

抗血栓薬や免疫抑制薬の中止タイミングを適切に設定し、術後合併症を最小限に抑えることが重要です。

どの薬を中止して、継続したままにするかは各病院や各医師によっては変わるため、必ず主治医に確認して手術に望むようにしましょう。

患者さんごとのリスクを評価しながら、安全な手術を実施するために、内服薬はきちんと調整しましょう!

以上、少しでも参考になれば幸いです。

では、また!!


人工股関節置換術の手術前には色々中止したほうが良い薬があるので要注意です!

野球

「日本野球発祥の地!」



来世はメジャーリーガーに生まれ変わる予定の整形外科医の塗山正宏でした!




【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医

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