おはようございます!
不眠になったことはほぼない塗山です。
今回のテーマは、
人工股関節置換術後の不眠についてです。

術後の不眠はよくあることなんです。

術後に眠れないのは困りますね…
人工股関節置換術後の不眠 ― 手術後の眠れない夜の原因と対策 ―
1. はじめに
人工股関節置換術(THA:Total Hip Arthroplasty)は、変形性股関節症や特発性大腿骨頭壊死症などによる股関節痛を劇的に改善する手術です。
しかし、「痛みは良くなったけれど、なかなか眠れない」という訴えを術後にされる患者さんも少なくありません。
本記事では、人工股関節置換術後の不眠の原因と、その対策方法について、最新の研究を踏まえて整形外科医の塗山正宏が詳しく解説します。
2. 不眠はなぜ起こるのか?
① 術後疼痛と筋肉の緊張
術後しばらくは手術部位の痛みや筋肉のこわばりが残り、夜間の寝返りなどで痛みが出ることがあります。
特に股関節周囲の筋肉が緊張しやすく、体位によって違和感や引きつりを感じることがあります。
夜間痛が続くと、入眠困難や中途覚醒を引き起こします。
② 睡眠環境の変化
入院中は照明や物音、夜間の看護ケアなどで睡眠リズムが乱れがちです。
退院後もそのリズムが回復せず、眠りにくさが続くことがあります。
③ 精神的ストレス・不安
手術を受けたという心理的ストレス、再発や脱臼への不安、社会復帰への焦りなどが交感神経を優位にして不眠の原因となることがあります。
④ 薬剤の影響
術後に使用される鎮痛薬(特にオピオイド系)は、睡眠の質を低下させることが知られています。
痛み止めを減量・変更するタイミングでも一時的に睡眠障害が起こることがあります。
⑤ 身体活動量の低下
術後安静が続くと日中の運動量が減少し、夜間の自然な眠気が出にくくなることがあります。
3. 不眠対策:医師が推奨する5つのポイント
| 対策 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ① 痛みコントロール | 適切な鎮痛薬の使用・リハビリで筋緊張を軽減 | 痛みのコントロールが重要 |
| ② 寝る姿勢の工夫 | 仰臥位で膝下にクッションを入れる | 側臥位時は股関節を軽度屈曲・外転位に保つ |
| ③ 睡眠習慣の改善 | 毎日同じ時間に就寝・起床する | 寝る直前のスマホやTVは避ける |
| ④ 軽い運動 | 日中のウォーキングやストレッチ | 体温上昇→下降リズムで入眠促進 |
| ⑤ 精神的ケア | 不安や抑うつに対するカウンセリング | リラックス法(深呼吸・瞑想など)も効果的 |
4. 推奨される寝る姿勢
人工股関節置換術後の初期は脱臼を防ぐ体位が重要です。
- 仰向け:膝の下に枕を置くと股関節の緊張が軽減
- 横向き:健側を下にして、患側の膝の間にクッションを挟む
- うつ伏せ:術後早期は避ける
寝る姿勢が安定しない場合は、骨盤を支えるボディピローを使用するのもおすすめです。
5. 睡眠薬の使用について
短期間の睡眠薬は有効ですが、長期使用は依存や転倒リスクを高めます。
最近ではメラトニン受容体作動薬(ラメルテオンなど)やオレキシン受容体拮抗薬(スボレキサントなど)など、依存の少ない薬剤が選択肢となります。
薬剤使用は医師の指導のもと、根本原因の改善と併用して行うことが重要です。
6. 不眠とリハビリの関係
睡眠不足は創傷治癒の遅延・免疫低下・痛み感受性の増加を引き起こすことが報告されています(Moldofsky, H. Sleep Med Rev., 2010)。
また、リハビリ意欲の低下にもつながるため、早期から睡眠の質を整えることが回復促進に不可欠です。
7. 参考文献
Wylde V, et al. Sleep disturbance after total hip and knee replacement: prevalence and associations with pain, function, and quality of life. Sleep Med. 2011;12(6):617-621.
Lewis GN, et al. Sleep disturbance and recovery after total hip arthroplasty. J Arthroplasty. 2015;30(11):1903-1908.
Moldofsky H. Disordered sleep, pain, fatigue and Sickness Response. Sleep Med Rev. 2010;14(3):223–244.
Tsukada S, et al. Postoperative insomnia and pain after total hip arthroplasty: prospective study. J Orthop Sci. 2018;23(4):678-684.
8. まとめ
人工股関節置換術後の不眠は、痛み・不安・姿勢・環境の変化など多因子的に生じます。
眠れない夜が続く場合は、自己判断せず医師に相談し、適切な鎮痛・リハビリ・睡眠指導を受けることが大切です。
術後しばらく経っても不眠が続く場合には、やはり精神科を受診するのが良いでしょう。
睡眠の質を高めることは、「人工股関節の長期成績を守る」ことにもつながります。
良い睡眠から、良い回復を。
以上、参考になりましたでしょうか!?
では、さらば!!
人工股関節置換術後の不眠は色々な要因で起こるので、適切に対処していきましょう!

「大盛豚丼!」
同じものを沢山食べるのはもう年齢的にきつくなってしまった整形外科医の塗山正宏でした!
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医


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