格言 Season210

格言 格言

人工股関節を迷っているあなたへ。

1. 年齢ではなく、“これからの人生”で考える治療という選択

整形外科医の塗山正宏です!

塗山先生
塗山先生

人生に遅すぎる一歩はありません。

この言葉は、私が診療の中で患者さんに何度もお伝えしてきた想いです。

外来では、

  • 「もう80歳だから手術は遅いですよね。」
  • 「80歳で人工股関節なんて無理でしょうか。」
  • 「今さら歩けるようになっても……。」

そんな相談を受けることがあります。

私は、そのたびにこうお答えしています。

塗山先生
塗山先生

年齢だけで、未来を諦める必要はありません。

人工股関節置換術(Total Hip Arthroplasty:THA)は、若い人のためだけの手術でも、高齢だから諦める手術でもありません。

これからの人生を、自分らしく歩き続けるための治療です。


2.「もう年だから」が、一番もったいない理由

変形性股関節症は、加齢や股関節の形態異常(寛骨臼形成不全など)、過去の外傷などを背景に発症し、徐々に進行する病気です。

初期は、

  • 少し歩くと股関節が痛む
  • 長時間立つと疲れる

程度ですが、

進行すると、

  • 靴下が履けない
  • 階段がつらい
  • 夜も痛くて眠れない
  • 外出する機会が減る

など、生活そのものに影響を及ぼします。

それでも、

「年齢を考えると手術は無理。」

と考え、何年も我慢される患者さんは少なくありません。

しかし、その間にも筋力は低下し、活動量は減り、身体機能は少しずつ失われていきます。

我慢した時間が、そのまま健康寿命を縮めてしまうこともあるのです。


3. 人工股関節は「若返る手術」ではありません

人工股関節置換術は、年齢を若返らせる手術ではありません。

しかし、

「歩ける時間」を取り戻すことはできます。

歩けるようになることで、

  • 毎日の買い物が楽になる
  • 趣味を再開できる
  • 旅行へ行ける
  • 家族との外出が増える
  • 運動習慣が戻る

など、人生の選択肢は大きく広がります。

つまり人工股関節は、

「年齢を変える治療」ではなく、「これからの毎日を変える治療」なのです。



4. 年齢だけで手術は決まりません

「何歳まで人工股関節を受けられますか?」

これは非常によくいただく質問です。

結論から言えば、

年齢だけで手術の適応が決まることはありません。

大切なのは、

  • 全身状態
  • 心臓や肺の機能
  • 骨の状態
  • 日常生活への影響
  • 患者さん自身が何を望んでいるか

を総合的に判断することです。

実際には80歳代でも人工股関節置換術を受け、痛みが改善し、自立した生活を送られている患者さんは数多くいらっしゃいます。

もちろん、高齢になるほど合併症のリスク評価や周術期管理はより重要になります。

そのため、手術を検討する際には専門医と十分に相談し、ご自身の体力や持病も踏まえて判断することが大切です。


5.「もっと早く相談すればよかった」

これは、人工股関節術後の患者さんから最も多く聞く言葉の一つです。

70代の女性患者さん。

変形性股関節症の痛みを10年以上我慢されていました。

「みんなに迷惑をかけたくない。」

その思いで杖を使いながら生活していました。

人工股関節置換術後、半年が過ぎたころ、

診察室でこんな言葉をかけてくださいました。

しほさん
しほさん

先生、もっと早く相談していたら、もっとたくさん旅行に行けましたね。

私はその言葉が、とても印象に残っています。

手術を受けたことよりも、

「また歩けるようになった時間」

の価値を実感された瞬間でした。


6. 歩けることは健康寿命につながる

歩くことには、

  • 筋力維持
  • 転倒予防
  • 骨粗しょう症予防
  • 心血管疾患リスクの低下
  • 糖尿病など生活習慣病の予防
  • 認知機能の維持
  • 気分の改善

など、多くの健康効果が報告されています。

人工股関節置換術の目的は、単に股関節の痛みを軽減することだけではありません。

「また歩き続けられる身体」を取り戻し、健康寿命を延ばすことにもつながる可能性があります。


7.「遅い」と思った今日が、一番早い日

人生には、

「もっと若かったら。」

と思う瞬間があります。

しかし、

未来から今日を振り返れば、今日が一番若い日です。

だからこそ私は、患者さんにこうお伝えしたいのです。

塗山先生
塗山先生

人生に遅すぎる一歩はありません。

その一歩は、診察の予約かもしれません。

リハビリを始めることかもしれません。

手術について相談することかもしれません。

どんな一歩でも構いません。

前へ進もうとする気持ちが、未来を変えていきます。


8. まとめ

人工股関節置換術は、

「高齢だから受ける手術」でも、「若いから受ける手術」でもありません。

痛みによって諦めていた人生を、もう一度歩き始めるための手術です。

もし今、

  • 股関節の痛みで外出を控えている
  • 趣味を諦めている
  • 「年齢だから仕方ない」と思っている

そんな状況であれば、一度専門医に相談してください。

治療の目的は、年齢を変えることではありません。

これから先の人生を、あなたらしく歩き続けることです。

塗山先生
塗山先生

人生に遅すぎる一歩はありません。

その一歩を踏み出す勇気が、数年後のあなたの笑顔につながるかもしれません。


9. 参考文献

  1. Learmonth ID, Young C, Rorabeck C. The operation of the century: Total hip replacement. Lancet. 2007;370(9597):1508-1519.
  2. Evans JT, Evans JP, Walker RW, et al. How long does a hip replacement last? A systematic review and meta-analysis of case series and national registry reports. Lancet. 2019;393(10172):647-654.
  3. Katz JN, Arant KR, Loeser RF. Diagnosis and Treatment of Hip and Knee Osteoarthritis. JAMA. 2021;325(6):568-578.
  4. Tilbury C, Schaasberg W, Plevier JW, et al. Return to daily activities, work, and sports after total hip arthroplasty. Clin Orthop Relat Res. 2014;472(1):1247-1253.
  5. Bull FC, Al-Ansari SS, Biddle S, et al. World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. Br J Sports Med. 2020;54:1451-1462.


【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医

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