おはようございます。
人工関節の手術の事を考えこむのが好きな塗山正宏です。
今回のテーマは、
人工股関節全置換術と前方アプローチについてです。
MIS(Minimally Invasive Surgery:最小侵襲手術)の手術方法には主に3種類あり、
・仰臥位前方進入法(DAA:Direct Anterior Approach)
・仰臥位前外側進入法(ALS:Antero-Lateral Supine Approach)
・側臥位前外側進入法(OCM)
この3つの手術方法が筋肉、腱を切らずに行う真のMISと言います。
この前方、前外側を含めた前方系アプローチには一体どんな利点があるのでしょうか??
この前方系アプローチは筋肉、腱を切らずに手術を行うために、股関節の安定性を高い状態を保つことが出来ます。
そのため、人工股関節全置換術の合併症のひとつである脱臼のリスクが低いのです。
人工股関節の脱臼というのは、人工股関節置換術に特徴的な合併症であり、脱臼すると激痛のため歩行困難になります。
人工股関節が脱臼してしまうと、実際には救急車で病院に行かないといけません。
この前方系アプローチの場合、人工股関節の安定性が高いため、術後の肢位制限をしない医師が増えてきています。
私は仰臥位前外側アプローチを基本全ての患者さんに行っていますが、術後3か月以降は肢位の制限をしていません。
流石に人工股関節の術後早期は、人工股関節がまだ安定しない状態ですから、無理に股関節を曲げすぎたり、捻りすぎたりすると脱臼するリスクがありますので気を付けましょう。
(前方系アプローチでもずっと肢位の制限を設けている病院もあります。)
後方アプローチの場合は、どうしても関節の安定性が下がるために、術後の屈曲制限(しゃがんではいけない)や内転制限(脚を内側に入れてはいけない)などの手術後の制限が一生続く場合があります。
むしろ、それが今までは一般的でした。
今でもそういう病院は多いかと思います。
手術方法によって、その後の生活レベルが変わる可能性があるので、手術を受ける時には良く考えて手術を受けましょう。
以上、手術方法によって変わる人工股関節の脱臼するリスクについて説明させて頂きました。
前方系アプローチでは、人工股関節が脱臼するリスクを減らす事ができる。
特茶の中ではジャスミンが好きな整形外科医の塗山正宏でした。
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医