おはようございます!
夏は汗が止まらなくなる塗山です。
今回のテーマは、
人工股関節置換術とセメントレスカップについてです。

セメントレスカップ知ってます?

いや、よくわかりません…
人工股関節置換術とセメントレスカップの特徴とは?
1.はじめに
どーも!整形外科医の塗山正宏です。
今日は人工股関節置換術のインプラントの話です。
人工股関節置換術(THA:Total Hip Arthroplasty)は、変形性股関節症や特発性大腿骨頭壊死症などによって破壊された股関節を人工物に置き換える手術です。
近年では手術技術やインプラント設計の進化により、術後成績は大きく向上しています。
中でも注目されているのが、セメントレスカップ(cementless acetabular cup)の使用です。
この記事では、セメントレスカップの特徴・利点・適応、そしてセメントカップとの比較を交えながら、わかりやすく整形外科医の塗山正宏が笑顔満載で解説します。
2.セメントレスカップとは?
人工股関節の「カップ」とは、骨盤側(寛骨臼)に設置される半球型の人工関節部品です。
セメントレスカップはその名の通り、骨セメントを使用せず、骨と直接結合することを前提としたカップです。
セメントレスカップの構造的特徴
- 表面が多孔質チタンやハイドロキシアパタイトコーティングで加工され、骨が入り込みやすい構造
- 初期固定は圧入(プレスフィット)によって行い、その後に骨による生物学的固定(骨癒合)を期待する
3.セメントレスカップのメリット
✅ 長期耐久性が高い
骨と直接結合することで、長期的な安定性が期待されます。特に若年者や活動性の高い患者において、その耐久性は大きな利点です(Kärrholm et al., 2011)。
✅ 骨セメント関連の合併症を回避
セメントを使用しないため、セメントアレルギーやセメント挿入時の循環器系合併症(例:セメント塞栓症)を回避できます。
✅ 将来的な再置換時の骨温存
再置換術時にセメントを除去する必要がないため、骨欠損が少なく、再置換が容易になる傾向があります(容易でない場合もある…)。
✅ 術後の骨反応を利用できる
加齢に伴う骨代謝を利用し、生物学的固定により骨との一体化が促進されることもあります。
4.セメントレス vs セメントカップ:どちらが優れている?
特徴 | セメントレスカップ | セメントカップ |
---|---|---|
初期固定 | 圧入による安定 | セメントによる即時安定 |
長期固定 | 骨癒合による安定 | セメントの劣化が問題 |
高齢者への適応 | △(骨質による) | ◎(脆弱骨にも使用可) |
若年者への適応 | ◎ | △(耐久性の懸念) |
合併症 | セメント関連なし | セメント塞栓リスクあり |
→ セメントカップ、セメントレスカップそれぞれ利点&欠点があります。
5.文献による裏付け
- Kärrholm J, et al. (2011)
“The Swedish Hip Arthroplasty Register Annual Report”
→ セメントレスカップは、特に50歳未満の患者において、10年生存率が高いと報告。 - Bozic KJ, et al. (2005)
Cemented versus cementless fixation for THA: a cost-effectiveness analysis.
→ セメントレスの方が長期的にはコストパフォーマンスが高い可能性を示唆。 - Malchau H, et al. (2002)
The Swedish Hip Arthroplasty Register: evaluation of THA outcomes.
→ 年齢・骨質に応じてセメント使用の有無を選択すべきと提言。
6.まとめ:セメントレスカップは長期耐久性に優れている
人工股関節置換術におけるセメントレスカップは、手術の長期的成功に大きく貢献しています。
特に骨質が良好で、生物学的固定が得られたセメントレスカップは長期の耐久性が期待できます。
一方で、骨粗鬆症を伴う高齢者ではセメントカップの利点も多く、患者さんごとの骨質や活動性、年齢に応じた適切なインプラントの選択が重要です。
ちなみに、私は基本すべての患者さんにセメントレスカップを使用しています。
たとえば骨質が不良でも、現在のセメントレスカップはきちんとした手術手技であれば、確実に寛骨臼に固定する事が可能ですからね。
以上、参考になりましたでしょうか?
では、また!!
セメントレスカップは、骨癒合が得られれば、長期に機能する可能性が高い!

「夏はやっぱりBBQですよ!」
BBQをやろうと思って結局やらない事が多い整形外科医の塗山正宏でした!
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医
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