股関節79 人工股関節置換術と術式のクオリティ

術式のクオリティ 股関節

おはようございます。
他人の誕生日がなかなか覚えられない塗山正宏です。



今回のテーマは、

人工股関節置換術と術式のクオリティについてです。



人工股関節全置換術と言っても手術方法は色々あります。

手術を行うための進入法(皮膚を切開する位置)が主に4つあります。

主に4つの手術アプローチがありますが、それぞれ皮膚を切開する位置が変わります。

人工股関節置換術の4つの手術アプローチ

・前方(Direct Anterior Approach)

・前外側(Antero-Lateral Supine Approach、OCM、Mini-One)

・側方(Direct Lateral Approach)

・後方、後側方(Posterior Approach,  PosteroLateral Approach)

病院や医師により人工股関節の手術方法が変わりますので、人工股関節の手術を受ける際には担当医師に手術ではどのアプローチ方法を用いるのか確認してもいいでしょう。




では、MIS(筋間アプローチ)の手術方法についてもう少し深く掘り下げていきましょう。

筋間アプローチによるMISの手術方法は主に3種類あります。

MISの3つのアプローチ

縫工筋と大腿筋膜張筋の間から手術を行う

1.仰臥位前方進入法(DAA:Direct Anterior Approach)


大腿筋膜張筋と中殿筋の間から手術を行う

2.仰臥位前外側進入法(ALS:Antero-Lateral Supine Approach)

3.側臥位前外側進入法(OCM)


この3つの手術方法が筋肉と腱を切らずに行う真のMISと言います。


おさらいすると、現在MISの手術方法としては主に3種類あり、

仰臥位前方進入法(DAA:Direct Anterior Approach)

仰臥位前外側進入法(ALS:Antero-Lateral Supine Approach)

側臥位前外側進入法(OCM)

が挙げられます。

仰臥位手術は手術台にあおむけで寝て行う手術で、側臥位手術は手術台に横向きで寝て行う手術です。

私は人工股関節のインプラント設置(特にカップの設置)がより正確に行える仰臥位手術を基本としており、基本的にはALSによる人工股関節全置換術を行っています。

この前方、前外側を含めた前方系アプローチには、筋肉や腱を切らずに手術を行うため、術後の痛みが少なく股関節の安定性を高い状態を保つことが出来ます。

そのため、人工股関節全置換術の合併症のひとつである脱臼のリスクが低いのです。

さらに組織を出来るだけ温存するために、術後の早期回復を得ることが出来ます。

これらの利点があるために、私は現在ほとんどの患者さんに仰臥位前外側進入法(ALS:Antero-Lateral Supine Approach)で人工股関節全置換術を行っています。

色々な人工股関節全置換術の手術方法(前方、側方、後方など)を経験した結果、この手術方法が一番ランスが良い手術方法だと感じたので、この手術方法に落ち着きました。


というわけで、

外来でたまに聞かれる質問があります。

あかねさん
あかねさん

同じような術式を行っている病院ってありますか?

塗山医師
塗山医師

はい、同じような術式を行っている病院はあります。

私が行っているALSのアプローチによる人工股関節置換術を施行している病院は、年々増えてきていると思います。

やはり術後の回復が良いので取り入れる医師が増えてきているのでしょう。

ただし、術式が一緒でも手術のクオリティは病院や執刀医によって差があるのが実情です。

同じALSアプローチによる人工股関節置換術でも、手術が30分で終わる場合と120分で終わる場合では、術後の回復は変わります。

そして、同じ術式でも人工股関節のインプラントの設置の精度も執刀医によって変わります。

手術方法が同じであれば、手術の結果が同じだと思ってしまう方がいるようなのですが、決してそうではないということです。


術式が一緒だからって、手術の結果が同じとは限らない。

「窓ガラス汚いから止めなさい!」

常に腕を太くしたい願望がある整形外科医の塗山正宏でした。



【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医

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