膝関節213　人工膝関節置換術とジョギング

おはようございます！
フルマラソンはもう卒業している塗山です。





今回のテーマは、

人工膝関節置換術とジョギングについてです。

人工膝関節置換術とジョギング：再開は可能か？整形外科医塗山が解説

ちーっす！整形外科医の塗山正宏でーす！

全国のとやまの膝の話に興味がある10人くらいの皆様！お待たせしました！

今日は膝のお話をしますよ。

人工膝関節置換術（TKA：Total Knee Arthroplasty）を受けた患者さんからよくいただく質問の一つが、「手術後、ジョギングは再開できますか？」というものです。

スポーツ復帰、とくに膝に負担のかかるジョギングについては、慎重な判断が求められます。

本記事では、最新の研究やガイドラインをもとに、人工膝関節置換術後のジョギングの可否や注意点、リスクについて塗山が笑顔を交えながら詳しく解説します。

1. 人工膝関節置換術とは？

人工膝関節置換術とは、変形性膝関節症や関節リウマチなどで損傷した関節を人工物に置き換える手術です。

術後の痛み軽減や可動域改善によって、患者さんのQOL（生活の質）は大きく向上します。

しかし、人工関節は天然の関節と異なり、摩耗や破損のリスクがあるため、使用に一定の制限が必要です。

2. ジョギングは推奨されているか？

結論から言えば、人工膝関節置換術後のジョギングは、原則として推奨されていません。

理由：

• ジョギングは膝関節に体重の4～6倍の負荷がかかる高衝撃運動です。
• 人工関節の寿命に影響を与える可能性があります。
• インプラントの摩耗・ゆるみ・破損のリスクを高めることが報告されています。

3. 文献による根拠

✅ Healy WL, et al. (2001)

“High-impact sports such as running and jumping are not recommended after total knee arthroplasty.”
→ 高衝撃運動はインプラントの寿命を短くする可能性があると報告。

✅ Mont MA, et al. (2007)

“Patients who engage in jogging after TKA show higher rates of wear and early loosening of components.”
→ 術後にジョギングを再開した患者は、早期のゆるみや摩耗が増加傾向。

✅ Kuster MS. (2002)

“Jogging generates peak forces up to 5-6 times body weight at the knee joint.”
→ ジョギングは膝に極めて高い負荷をかける運動である。

4. それでもジョギングをしたい人へ

ジョギングが生きがいという方も少なくありません。そのような方に対しては、以下の点に留意する必要があります。

◎ 医師の許可を得る

術後の状態（可動域、筋力、骨密度など）を主治医が評価し、個別に判断します。

◎ 術後６～12か月以上の期間を空ける

少なくとも術後6～12か月以上経過しており、安定していることが条件。

◎ クッション性の高いシューズを使用

膝への衝撃を最小限に抑える工夫が必要です。

◎ ソフトサーフェスでの実施

アスファルトではなく、土や芝などの柔らかい地面を選びましょう。

5. ジョギングの代替となる運動

人工膝関節に優しい運動も数多くあります。

たとえば：

• ウォーキング（速歩）
• 水中歩行や水泳
• エリプティカル（クロストレーナー）
• サイクリング

これらは低衝撃で関節に優しく、心肺機能の維持や筋力強化に有効です。

6. まとめ：人工膝関節置換術とジョギング

項目	内容
推奨度	原則として非推奨
リスク	インプラントの早期摩耗・ゆるみ・破損
例外的許可	医師による個別判断のもと
推奨代替運動	水泳、ウォーキング、サイクリング など

人工膝関節は、患者さんの活動性を高める一方で、「無制限に何でもできる」わけではありません。

人工膝関節はインプラントですので、過度な負荷が膝関節にかかれば、人工関節の寿命に影響を与える可能性があります。

人工膝関節を長持ちさせるためには、関節にやさしい運動を選ぶことが大切です。

以上、少しでも参考になっていれば嬉しい限りです。

では、さらば！

「イタリアのフィレンツェ！」

そろそろヨーロッパに旅に出たい整形外科医の塗山正宏でした！

【執筆】塗山正宏　医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医