膝関節214 人工膝関節置換術後の轢音

膝関節


おはようございます!
膝を日々を大事にしているつもりの塗山です。





今回のテーマは、

人工膝関節置換術後の轢音についてです。





塗山先生
塗山先生

人工膝関節置換術後は膝で音が鳴る場合があります。

そうなんですか??

1. 「人工膝関節の手術をしたのに、膝から音がするんです…」

人工膝関節置換術(TKA:Total Knee Arthroplasty)を受けた患者さんから、

歩くたびにカクカク音がする

膝の中で何かがこすれているような音がする

といった“轢音(れきおん)”に関するご相談をよくいただきます。

この記事では、人工膝関節と轢音の関係、主な原因、問題があるケースとないケースの違い、対処法について、医学的根拠をもとにわかりやすく整形外科医の塗山正宏が目を細めながら解説します。



2. 轢音(れきおん)とは?

轢音とは、関節を動かしたときに「カクッ」「ギシッ」「コツコツ」といった機械的な音や感覚を指します。

人工膝関節置換術後には、ある程度の轢音が発生することはよくあることで、必ずしも異常とは限りません


3. 人工膝関節置換術後に轢音が起こる理由

🔹 1. 人工関節部品の接触音

人工関節は金属やポリエチレン製の構造物でできており、関節を動かすとこれらがこすれ合って摩擦音が発生することがあります。

🔹 2. 周囲軟部組織との干渉

膝蓋骨(お皿)と人工物がこすれることで、「クリック音」や「こすれる感じ」を生じる場合があります。

🔍 文献:Rothermich MA, et al. (2016)
「人工膝関節後の軟部組織との摩擦による轢音は比較的よく見られるが、大多数は自然軽快する」

🔹 3. アライメントや軟部組織の緊張

靭帯バランスがやや不均等な場合や、筋力が低下している状態では関節が正確に動かず音が出ることもあります。



4. 問題のない「轢音」とは?

以下のようなケースでは、轢音があっても心配の必要はありません

状態コメント
痛みがない音はしても、日常生活に支障がなければ経過観察
可動域が良好関節の動きがスムーズで、腫れや熱感がなければ問題なし
徐々に軽減している術後3〜6ヶ月程度で減少する場合が多い

🔍 文献:Dennis DA et al. (2001)
「轢音は人工関節の特性上ある程度は避けられないが、疼痛を伴わない場合は臨床的意義は小さい」




5. 注意が必要な「轢音」とは?

以下の場合は、再診が必要です。

  • 音とともに膝の痛みがある
  • 可動域が狭くなってきた
  • 膝に腫れや熱感がある
  • 以前より音が大きく・頻繁になった

これらは人工関節のゆるみ、摩耗、感染、インピンジメントなどの可能性があるため、整形外科医による診察・画像評価が必要です。


6. 対処法・予防法

✅ 1. 筋力強化とバランス改善

大腿四頭筋や中殿筋のトレーニングは、関節の安定性向上に効果的。

✅ 2. 関節可動域訓練の継続

→ しなやかな動きが轢音の軽減につながります。

✅ 3. 正しい歩行パターンの習得

→ 理学療法士による歩行訓練は、轢音軽減に寄与することがあります。


7. よくある質問(Q&A)

Q. 音がするとき、歩いても大丈夫ですか?

→ 痛みや腫れがなければ基本的に問題ありません。ただし無理のない範囲で。

Q. 一生この音は続きますか?

→ 多くの場合、筋力や組織が回復することで徐々に軽減していきます。

Q. 音がする=再手術が必要ですか?

→ 轢音=再手術とは限りません。他の症状を伴うかどうかが重要です。


8. 文献紹介(参考)

  1. Rothermich MA, Brown TE. Noisy total knee arthroplasty: causes and evaluation. J Am Acad Orthop Surg. 2016;24(5):334–342.
  2. Dennis DA, Komistek RD. Mobile-bearing total knee arthroplasty. Clin Orthop Relat Res. 2001;(392):300–307.
  3. Scott CEH, et al. Noise from total knee replacements: prevalence, patient perception and quality of life. Knee. 2014;21(5):1016–1020.




9. まとめ:轢音があっても慌てず、まずは様子を観察しましょう

ポイント内容
轢音の発生多くは正常範囲で発生
危険なサイン痛み・腫れ・可動域制限がある場合
対処法筋力強化・リハビリ・再診の検討
再手術との関係音だけで手術が必要なことは稀

人工膝関節置換術の術後の異音自体は決して珍しい現象ではありません。

仮に多少の異音が起きていても、疼痛を伴わないようであれば、通常はリハビリテーションをしながら経過観察をするのが一般的です。

異音にともなって強い痛みを伴うようであれば、場合によっては手術を検討しなければなりません。

色々説明してきましたが、人工膝関節置換術の術後の異音自体は、通常はあまり心配のない現象ですので、過度な不安を感じる必要はないでしょう。

不安を解消し、より安心して人工関節と付き合っていくことが、再び快適な生活を送る第一歩です。

とりあえず異音が生じるようであれば、まずは医師に相談を!

以上、参考になりましたでしょうか!?

では、さらば!!


人工膝関節置換術の術後には、膝のなかで音がする場合があるけどあまり心配しなくてよい!

座禅


「瞑想がメンタルのリフレッシュに大事!」




定期的に瞑想をしてメンタルを再起動する整形外科医の塗山正宏でした!

【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医

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