「知之者不如好之者、好之者不如楽之者」
「知る者は好む者に如かず。好む者は楽しむ者に如かず」
孔子
この孔子の言葉は、
「物事を知っているだけの人は、それを好む人には及ばない。そして、それを好む人も、それを楽しむ人には及ばない」
という意味です。
学びや修養についての教えですが、私はこれをリハビリや運動習慣の継続に当てはめて考えています。
知っているだけでは行動できない
手術を受けた患者さんに、私はよくこう伝えます。
- 「筋肉を動かさないと弱くなります」
- 「歩行練習は股関節や膝の回復に不可欠です」
多くの方はその「知識」を理解してくださいます。
しかし、知識だけではリハビリは続かないのです。
「好きになる」と行動が変わる
歩くことやストレッチを「少し好きになる」だけで、行動は一変します。
例えば、
- 「散歩しながら季節の花を見るのが楽しみ」
- 「音楽を聴きながら運動するのが気持ちいい」
こうした「好き」という感情が、リハビリを習慣化する大きな力になります。
「楽しむこと」が最高のリハビリ薬
さらに一歩進んで、リハビリそのものを「楽しめる」ようになると、回復スピードは格段に上がります。
実際、運動を楽しむ高齢者ほど身体機能が維持されやすいという研究報告もあります。
「今日はどれくらい歩けるかな」
「昨日よりも階段が楽になった」
そんな小さな発見を「喜び」として積み重ねられると、リハビリは義務から楽しみに変わります。
整形外科医としてのメッセージ
孔子の言葉は、術後の患者さんにも当てはまります。
- 知識だけではなく、行動へ
- 行動するだけでなく、好きになることへ
- そして、楽しむことができれば、それが最大の力になる
人工関節の手術後も、変形性関節症の保存療法でも、「楽しむ姿勢」こそが最良の薬なのです。
参考文献
- Netz Y, Wu MJ, Becker BJ, Tenenbaum G. “Physical activity and psychological well-being in advanced age: a meta-analysis of intervention studies.” Psychol Aging. 2005;20(2):272–284.
- 孔子『論語』
まとめ
「楽しむ心が、最大のリハビリになる」
まさにこれですね。
リハビリは楽しみましょう。
これは2500年前の孔子の言葉が、現代の整形外科治療にも生きている証です。
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医


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