
健康とは、痛みがないことではなく、『今日も出かけよう』と思えることです。
整形外科医の塗山正宏です。
整形外科医として何万人もの患者さんを診てきましたが、この言葉ほど「健康」の本質を表しているものはないと思っています。
健康とは、痛みがないことではなく、「今日も出かけよう」と思えることです。
1. 〜人工関節専門医が考える、本当の健康とは〜
「先生、痛みがゼロになったら旅行に行きます。」
外来でよく聞く言葉です。
でも私は少しだけ違う考えを持っています。
旅行に行けるようになったから健康なのではありません。
「行ってみようかな」と思える気持ちが戻った時、人は健康を取り戻し始めています。
今日は、整形外科医塗山が考える「健康」についてお話しします。
2. 健康=痛みゼロではない
多くの人は
- 痛みがない
- 病気がない
- 検査結果が正常
これが健康だと思っています。
もちろん間違いではありません。
しかし現実はどうでしょう。
80歳を過ぎれば
- 少し腰が痛い
- 少し膝が痛い
- 少し肩が上がりにくい
そんな方は珍しくありません。
それでも毎日
- 散歩に行く
- 買い物に行く
- 趣味を楽しむ
- 孫に会いに行く
そんな生活を送っている方はたくさんいます。
一方で、検査では異常がないのに
「外へ出るのが怖い」
という方もいます。
つまり、
健康とは検査結果だけでは決まりません。
3. 「出かけよう」と思えることが健康
人間は不思議です。
好きなことがある日は、少し痛くても動けます。
例えば
「今日は孫の運動会」
なら歩ける。
「今日は温泉旅行」
なら朝から支度を始める。
「今日は友人とランチ」
なら階段も頑張れる。
つまり、
人を動かすのは筋肉だけではありません。
「楽しみ」が人を動かすのです。
4. 人工膝関節・人工股関節の本当の目的
人工関節手術は、「痛みをゼロにする手術」ではありません。
もちろん痛みは大きく改善します。
しかし本当の目的は人生を取り戻すこと。
私は患者さんへこう説明します。

関節を治すだけの手術ではありません。
あなたの人生を取り戻す手術なんです。
手術後に患者さんから聞く言葉があります。
- 温泉に行けました
- 孫と公園で遊べました
- ゴルフを再開しました
- 海外旅行へ行きました
- 犬の散歩ができました
この言葉こそが、私にとって一番うれしい「治りました」です。
5. 痛みを怖がりすぎない
もちろん無理は禁物です。
しかし「痛いから絶対に動かない」これも問題です。
変形性膝関節症では、運動療法は痛みや身体機能、日常生活動作(ADL)の改善に有効であり、診療ガイドラインでも強く推奨されています。適切な運動を継続することが、生活の質の向上につながります。
適度な運動は
- 筋力を保つ
- 関節を支える
- バランス能力を改善する
- 転倒予防になる
という多くのメリットがあります。
6. 「まだ歩ける」ではなく「どこへ行きたい?」
診察室で私は
「何メートル歩けますか?」
よりも
「どこへ行きたいですか?」
と聞くようにしています。
答えは様々です。
「京都へ行きたい」
「北海道へ行きたい」
「畑仕事をしたい」
「正月に家族旅行したい」
「ディズニーランドへ孫と行きたい」
その瞬間、治療の目標が数字ではなく人生の目標になります。
7. 少しだけユーモアを
患者さんに
「先生、手術したら20歳になりますか?」
と聞かれたことがあります笑。
私は笑いながら答えます。
「20歳には戻れませんが、気持ちは30歳くらい若返る方はたくさんいます(笑)。」
実際、
手術後は
「先生、旅行の予定が忙しくて大変です。」
という”うれしいクレーム”をいただくこともあります。
医者としては、そんなクレームなら何件でも歓迎ですね笑。
8. 世界保健機関(WHO)が考える健康
WHOでは健康を
身体的・精神的・社会的に良好な状態
と定義しています。
単に病気や障害がないことだけではなく、生活を楽しみ、社会とつながり、自分らしく過ごせることも健康の重要な要素です。
つまり
健康とは
- 歩けること
- 笑えること
- 会いたい人に会えること
- 行きたい場所へ行けること
なのです。
9. 私が患者さんへ最後に伝えたいこと
人工関節は人生を変えることがあります。
でも、人生を動かすのは人工関節ではありません。
あなたの「行ってみよう」という気持ちです。
その一歩を支えるために、
私たち整形外科医がいます。
10. 塗山正宏からのメッセージ

健康とは、痛みがないことではなく、『今日も出かけよう』と思えることです。
今日は近所の公園でもいい。
スーパーでもいい。
カフェでもいい。
少しだけ外へ出てみませんか。
その一歩が、明日の笑顔につながります。
そして、その笑顔こそが、私の考える「本当の健康」です。
11. 参考文献
- 日本整形外科学会. 変形性膝関節症診療ガイドライン2023. 南江堂. 運動療法は鎮痛・身体機能・ADL改善のため強く推奨。
- 千田益生. 変形性膝関節症における運動療法. The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine. 2026;63(4):340-349.
- World Health Organization. WHO Guidelines on Physical Activity and Sedentary Behaviour. 2020. 身体活動の継続は健康維持・慢性疾患管理に重要。
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医


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