おはようございます!
気が付いたら1年ごとに1歳年齢が増えている事に気が付いた塗山です。
今回のテーマは、
人工膝関節置換術を受ける年齢についてです。

人工膝関節の手術に年齢制限ってあると思いますか?

ちょっとわからないですね…
人工膝関節置換術を受ける年齢:適切なタイミングと最新知見
どーも、整形外科医の塗山正宏です。
今日は膝の話をしていきますよ!
人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty: TKA)は、変形性膝関節症や関節リウマチなどによる強い膝関節痛や機能障害に対し、有効な治療法として広く行われています。
しかし、手術を受ける年齢については議論があり、特に若年者への適応や高齢者への安全性が課題となっています。
この記事では、人工膝関節置換術を受ける適切な年齢、若年者や高齢者での留意点、最新の研究結果を踏まえて塗山が笑顔で少しだけ詳しく解説してみます。
1. 人工膝関節置換術の年齢分布と現状
日本では、変形性膝関節症の患者数が増加しており、その中でも60歳代から80歳代が手術の中心年齢層です。
手術を受ける年代は70代が最も多く、次に多いのは80代になっています。
また、厚生労働省のデータによれば、TKAを受ける患者の平均年齢は約75歳程度と報告されています。
一方で、60歳未満の若年患者が増加傾向にあり、スポーツ活動や高い生活レベルを求める患者が多いため、適応判断が難しくなっています。
2. 若年者の人工膝関節置換術の課題
2-1. 耐用年数と再置換リスク
若年者で人工膝関節置換術を行う際に最も大きな課題となるのが耐用年数です。
人工膝関節の平均耐用年数は現在は約20年以上とされていますが、若年者では活動量が多く、早期に摩耗やゆるみが生じるリスクが高齢者よりも高まります。
文献レビュー
- National Joint Registry (NJR, 2023) の報告によると、50歳未満で人工膝関節置換術を受けた患者の10年生存率は約85%であり、高齢者と比較してやや低い結果となっています。
- Pabinger et al. (2015) は、55歳未満での人工膝関節置換術は20年以内に再置換が必要となる確率が35%に達すると報告しています。
2-2. 若年者への対策
- 保存療法を十分に検討:PRP療法やAPS治療、関節鏡視下手術などを考慮。
- 部分置換術(UKA) の選択:若年者における活動性を考慮し、必要最小限の人工関節を置換する方法が有効。
3. 高齢者における人工膝関節置換術の安全性
3-1. 手術リスクと合併症
高齢者では、心肺機能低下や骨粗鬆症などが手術リスクを増加させる要因となります。
しかし、近年の麻酔技術や術後管理の進歩により、80歳以上でも良好な成績が報告されています。
文献レビュー
- Belmont et al. (2018) の報告では、80歳以上でも90%以上が術後に痛みが軽減し、QOLが向上しているとされています。
- 一方で、術後感染や深部静脈血栓症(DVT)のリスクが相対的に高く、周術期管理が重要です。
4. 最適な手術年齢の考え方
4-1. 個別性を重視した判断
患者さんの活動レベル、社会的背景、基礎疾患を総合的に考慮して判断する必要があります。
4-2. 最新の研究知見
- Riddle et al. (2021) は、60歳から75歳が最も適切な年齢範囲であると指摘し、耐用年数とQOL向上がバランスしていると報告しています。
5. 年齢別のリハビリテーション戦略
若年者向け
- 積極的な筋力トレーニング:大腿四頭筋やハムストリングスを中心に強化。
- スポーツ復帰プログラム:関節に負担をかけないトレーニングが必要。
高齢者向け
- バランストレーニング:転倒予防を重視し、柔軟性も考慮。
- 低負荷での筋力維持:日常生活を意識したリハビリが重要。
6. まとめ
人工膝関節置換術を受ける適切な年齢は60~70代が目安とされますが、若年者や高齢者でも個別の状況に応じた適切な判断が求められます。
患者さんごとに人工膝関節の耐用年数や再置換リスク、合併症リスクを十分考慮しながら治療計画を立てることが重要です。
人工膝関節置換術を検討している方は、まず専門医と相談し、自分に最適な治療方針を見極めましょう。
若いからって諦めない。
高齢だからって諦めない。
一人で悩まないで相談するのが大事ですよ!
おわかりいただけますでしょうか。
では、また!
人工膝関節置換術の手術を受ける年齢制限は特にない!

「膝を良くして旅行に行きましょうか!」
いつか膝がボロボロにならないか心配している整形外科医の塗山正宏でした!
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医
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