「人工股関節の術後に大切なのは、“頑張りすぎない勇気”です。」
― 人工股関節術後に“やってはいけない頑張り”とは?整形外科医が解説 ―
1. はじめに|「早く良くなりたい」が落とし穴になることがあります
整形外科医の塗山正宏です!
人工股関節置換術(THA:Total hip arthroplasty)を受けた患者さんは、とても真面目です。
- 「早く歩けるようになりたい」
- 「迷惑をかけたくない」
- 「頑張ってリハビリしなきゃ」
そう考える方が多くいらっしゃいます。
もちろん、その前向きな気持ちはとても大切です。
しかし私は外来で、あえてこんなふうにお話しすることがあります。

人工股関節の術後に大切なのは、“頑張りすぎない勇気”です。
実は、人工股関節術後では、
“頑張りすぎ”が回復を遅らせることがあるのです。
この記事では、
- なぜ頑張りすぎが危険なのか
- 術後に本当に大切なこと
- 回復を早める人の共通点
を、整形外科医の立場からわかりやすく解説します。
2. 人工股関節術後で最も多い失敗
人工股関節術後で意外と多いのが、
「調子が良くなって動きすぎる」
というケースです。
たとえば、
- 退院直後に歩きすぎる
- 痛みを我慢して家事をする
- 無理に階段を繰り返す
- 「鍛えたほうが早く治る」と思い込む
こうした行動によって、
- 炎症が長引く
- 筋肉が疲労する
- 痛みがぶり返す
ことがあります。
3. 「痛みが減った=治った」ではありません
術後は、関節の痛みはかなり改善します。
すると患者さんは、
「もう大丈夫そう」
「思ったより動ける」
と感じます。
しかし実際には、
- 筋肉
- 腱
- 周囲組織
はまだ回復途中です。
つまり、

“痛みが減った”と“完全に治った”は別の話です。
4. 人工股関節の回復は「マラソン」
人工股関節術後の回復で重要なのは、
- 一気に頑張ること
ではなく、 - 無理なく続けること
です。
私はよく患者さんに、

回復は短距離走ではなく、マラソンです。
そして回復には波があります。
とお話ししています。
5. 頑張りすぎる人ほど、途中で苦しくなる
特に真面目な方ほど、
- 「もっと歩かなきゃ」
- 「サボってはいけない」
- 「我慢しないといけない」
と考えがちです。
しかし術後のリハビリは、“我慢大会”ではありません。
大切なのは、
- 適度に休む
- 疲れを残さない
- 痛みを悪化させない
ことです。
6. 術後に本当に大切な3つのこと
① 続けること
人工股関節術後で最も重要なのは、“ゼロにしないこと”です。
毎日少しずつでも続けることが、結果的に最短距離になります。
② 比べないこと
SNSや他人の回復と比較すると、
- 「自分は遅い」
- 「もっと頑張らなきゃ」
と思ってしまいます。
しかし回復速度には個人差があります。
比べるべきは、昨日の自分です。
③ 休むこと
実は、“上手に休める人”ほど回復が安定します。
疲労をため込みすぎないことは、長期的に非常に重要です。
7. 患者さんの実例
70代女性の患者さん。
術後2週間で痛みがかなり減り、
「動けるうちに頑張らなきゃ」
と毎日長距離を歩いていました。
しかしその結果、
- 太ももの痛み
- 強い疲労感
- 歩行フォームの乱れ
が出現。
一度ペースを調整し、
- 歩行量を適正化
- 休息をしっかり取る
- 無理をやめる
ことで、徐々に安定しました。
その後、患者さんはこう言われました。
「頑張らないほうが、逆に良くなりました」
これは人工股関節術後では、実は珍しくありません。
8. 人工股関節術後の“理想的な回復”とは?
理想的なのは、
- 少し動く
- 少し休む
- 無理なく続ける
この繰り返しです。
回復とは、“急激に良くなること”ではなく、“悪化せずに積み上がること”なのです。
9. 整形外科医塗山からのまとめ

人工股関節の術後に大切なのは、“頑張りすぎない勇気”です。
人工股関節置換術は、人生を前向きに変える力のある手術です。
しかし、その力を最大限に引き出すには、
- 焦らないこと
- 無理をしないこと
- 続けること
がとても重要です。
回復は競争ではありません。
一歩ずつ、あなたのペースで進めば大丈夫です。
10. 最後に
私はいつも患者さんに、こうお伝えしたいです。

回復は、頑張った量ではなく、“続けられた時間”で決まります。
焦らなくて大丈夫です。
人工股関節の回復は、ゆっくりでも確実に前へ進んでいきます。
以上、参考になりましたでしょうか!?
では、筋トレしてきます。
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医


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