【専門医が解説】人工股関節術後のむくみはいつまで続く?原因・対処法・危険なサインを徹底解説
こんにちは。整形外科医の塗山です。
人工股関節置換術(THA:Total hip arthroplasty)を受けた患者さんが、退院後の外来で最も多く相談される症状の一つがあります。
「先生、足がパンパンにむくんでいます。」
「手術は股関節なのに、足首まで腫れてきました。」
「これって失敗じゃないですよね?」
安心してください。
人工股関節術後のむくみは、多くの患者さんにみられる正常な回復過程の一つです。
とはいえ、
「普通のむくみ」と「すぐに受診すべきむくみ」は全く違います。
この記事では、
- 人工股関節術後になぜむくむのか
- むくみはいつまで続くのか
- 自宅でできる対策
- 危険なむくみの見分け方
について、整形外科専門医の立場から塗山が分かりやすく解説します。
1. 結論|術後のむくみは珍しくありません
まず結論です。
人工股関節術後のむくみは、ごく一般的な症状です。
手術によって傷ついた筋肉や皮下組織に炎症が起こり、一時的に水分がたまりやすくなるためです。
特に、
- 太もも
- お尻
- 膝
- ふくらはぎ
- 足首
まで腫れることも珍しくありません。術後数日から1~2週間にかけて腫れが目立ち、その後徐々に改善していく経過が一般的です。
2. なぜ足首までむくむの?
患者さんが驚かれるのがここです。
「股関節の手術なのに、なぜ足首まで?」
理由は重力です。
手術部位で生じた炎症による組織液や出血は、時間とともに下の方へ移動します。
そのため、最初は太ももだけだった腫れが、
数日後には
- 膝
- すね
- 足首
- 足の甲
まで下がってくることがあります。
つまり、足首がむくんだから悪化したとは限りません。
むしろ自然な経過であることも多いのです。
3. むくみはいつまで続く?
個人差はありますが、おおよその目安は次の通りです。
術後1週間
最も腫れやすい時期
術後2~6週間
徐々に改善
術後2~3か月
かなり軽減
術後6か月頃
ほとんど気にならなくなる方が多い。
活動量が増えると、一時的に夕方だけむくみが強くなることもあります。
これは必ずしも異常ではありません。
4. むくみが強くなる原因
① 手術による炎症
最も多い原因です。
人工股関節置換術では、皮膚だけではなく、筋肉や関節包も手術の影響を受けます。
その結果、炎症反応としてむくみが起こります。
② 重力
立っている時間が長いほど、水分は下へたまります。
夕方に足がパンパンになるのはこのためです。
③ 活動量が増えた
歩けるようになるのは良いことです。
しかし、急に歩き過ぎると、一時的に腫れが強くなることがあります。
「今日は調子がいい!」
と1万歩歩いた翌日に、足が「ちょっと相談があります…」と腫れて教えてくることがあります(笑)。
④ リンパ液の流れ
手術ではリンパ管も影響を受けます。
そのため、リンパ液が一時的に流れにくくなり、むくみが続くことがあります。
術式によってはリンパ浮腫が比較的起こりやすいことも報告されています。
5. 自宅でできるむくみ対策
① 足を高くして休む
心臓より少し高くすると、静脈やリンパ液が戻りやすくなります。
② アイスパックで冷やす
術後早期は、15~20分程度のアイシングを1日数回行うと、炎症や腫れの軽減が期待できます。
③ 足首を動かす
足首を上下に動かすだけでも、「第二の心臓」と呼ばれるふくらはぎの筋肉が働き、血流改善につながります。
④ 適度に歩く
安静にし過ぎても、逆にむくみやすくなります。
「歩く」と「休む」のバランスが大切です。
⑤ 弾性ストッキング
必要に応じて、医師の指示のもとで弾性ストッキングを使用します。
近年の研究では、適切な圧迫療法によって術後早期の腫れが軽減する可能性が示されています。
6. こんなむくみはすぐ受診してください
通常のむくみとは違い、次の症状がある場合は早めに受診しましょう。
・片脚だけ急に強く腫れた
・ふくらはぎが強く痛む
・足が赤く熱を持っている
・息苦しさ・胸の痛みがある
これらは、
深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓症の可能性があります。
人工股関節術後は血栓予防が非常に重要です。
7. 「むくみ=人工股関節の失敗」ではありません
外来で、

先生、このむくみは大丈夫でしょうか?
と心配される方がいます。
術後のむくみは、
体が一生懸命治ろうとしているサインでもあります。
もちろん、異常な腫れとの見極めは必要ですが、必要以上に心配する必要はありません。
8. よくある誤解(外来あるある)
❌ 手術が成功なら腫れない
→ 多くの患者さんで一時的な腫れはみられます。
❌ むくんでいるから歩かない方がいい
→ 適度な歩行は回復を助けます。
❌ 冷やし続ければ早く治る
→ 冷やし過ぎは皮膚障害の原因になるため、15~20分程度を目安にしましょう。
9. まとめ|むくみは「回復途中」のサインです
人工股関節術後のむくみは、決して珍しい症状ではありません。
多くの場合は、時間とともに改善していきます。
大切なのは、
- 無理をしない
- 適度に歩く
- 冷やす
- 足を高くして休む
- 危険なサインを見逃さない
ことです。
10. 最後に(整形外科医塗山からのひとこと)
外来で、
「先生、足が象さんみたいになりました。」
と言われることがあります。
確かに、術後しばらくは
「これ、本当に元に戻るの?」
と思うくらい腫れる方もいらっしゃいます。
でも安心してください。
ほとんどの場合、時間が一番の名医です。
焦らず、少しずつ歩いて、少しずつ休んで、少しずつ元の生活へ戻っていきましょう。
人工股関節は、ゴールではありません。
「また好きなことができる人生」のスタートラインなのです。
以上、参考になりましたでしょうか?
では、筋トレに行ってきます。
11.❓よくある質問(FAQ)
Q. 人工股関節術後のむくみはいつまで続きますか?
一般的には1か月でだいぶ改善し、2~3か月でさらに軽減します。個人差はあります。
Q. 足首まで腫れても大丈夫ですか?
重力の影響で足首までむくむことは珍しくありません。ただし、急激な片脚の腫れや強い痛みがある場合は受診してください。
Q. むくみを早く治す方法はありますか?
アイシング、足を高くして休むこと、足首の運動、適度な歩行、必要に応じた弾性ストッキングが有効です。
Q. むくみが何か月も続くことはありますか?
軽い腫れや張り感が数か月残る方もいます。改善傾向があることが多いですが、悪化する場合や赤み・発熱を伴う場合は受診してください。
12. 📚参考文献
- Pfitzner T, et al. Elastic Compression Dressing after Total Hip Replacement Slightly Reduces Leg Swelling: A Randomized Controlled Trial. J Clin Med. 2024.
- Schmitz C, et al. Postoperative lymphedema after primary total hip arthroplasty. Arch Orthop Trauma Surg. 2024.
- Shimizu Y, et al. Thigh swelling after total hip arthroplasty: time course and prevention by an adjustable compression supporter. Journal of Joint Surgery and Research. 2026.
人工股関節の手術後はしばらくむくみやすいので要注意!

【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医


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