おはようございます!
筋肉と骨は大事にしていきたい塗山です。
今回のテーマは、
人工股関節置換術のストレスシールディングについてです。

ストレスシールディングって知ってますか?

何かの技ですか?笑
人工股関節置換術のストレスシールディング|術後の骨密度低下のリスク
こんにちは!整形外科医の塗山正宏です。
人工股関節置換術(THA:Total Hip Arthroplasty)は、変形性股関節症や特発性大腿骨頭壊死症などに対して非常に効果的な治療です。
しかし、術後に「ストレスシールディング(Stress Shielding)」というステム周囲の大腿骨の骨密度の低下が生じることがあります。
今回は、このストレスシールディングについて、原因・メカニズム・予防法・インプラント選択の工夫を含めて整形外科医の塗山正宏が真面目な顔して解説していきます。
🔎 ストレスシールディングとは?
ストレスシールディングとは、人工関節が荷重を肩代わりしてしまい、本来骨が受けるべき力(ストレス)が減少することによって、骨密度が低下する現象です。
とくに大腿骨近位部(ステム周囲)に起こりやすく、長期的には骨折や再置換のリスクを高めます。
📘参考文献:Engh CA, et al. J Bone Joint Surg Am. 1992;74(6):839-846.
→ 「長期追跡でステム周囲に骨吸収を認める頻度は約50%以上」と報告。
💡 なぜストレスシールディングが起こるのか?
主な原因は「荷重の伝達経路の変化」です。
通常、大腿骨の骨幹部から近位部にかけて体重の荷重がかかることで骨が維持されます。
しかし、人工股関節では金属ステムが荷重を担いすぎるため、周囲の骨が使われなくなり、骨が痩せていきます。
要因
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| ステム材質が硬すぎる(チタン合金) | 弾性係数が骨より高く、応力を吸収しやすい |
| 長いステム | より遠位に荷重が移動し、近位の骨が免荷される |
| 固定様式(セメントレス vs セメント) | セメントレスステムの方がシールディングが出やすい |
| 患者因子(骨粗鬆症、高齢者) | 骨の代謝が低いと変化しやすい |
📘Rubash HE, et al. Clin Orthop Relat Res. 1991; (269): 118-128.
📊 ストレスシールディングの分類と頻度
Engh分類(radiographic zones)に基づき、大腿骨近位部の骨吸収パターンを評価します。
- Zone 1, 7(大腿骨近位):骨密度が最も低下しやすい
- Zone 2~6(中間部〜遠位):影響は少ないが出る事あり
📈 報告では、ストレスシールディングGrade II以上が術後10年で30〜40%程度発生(Kärrholm et al., 2002)

⚠️ ストレスシールディングがもたらす影響
- 大腿骨近位部の骨密度減少
- ステム周囲の骨折リスク上昇(特に転倒時)
- 再置換術時に骨による支持が不十分になる可能性
🛡 ストレスシールディングの予防策
① ステムデザインの工夫
- 短縮型ステム(ショートステム):近位で荷重を分散させ、骨密度維持に寄与
- テーパー型・楕円型のデザイン:生理的荷重伝達に近づける
📘Santori FS, et al. Clin Orthop Relat Res. 2006;453:90–97.
→ 「ショートステムでは近位骨密度の維持がより良好であった」と報告。
② 材質の選択
- チタン合金(Ti-6Al-4V)は弾性係数が低く、骨に近いため、ストレスシールディングを軽減しやすい。
③ 骨密度の定期評価
- 術後の骨密度検査による骨の状態の評価が重要
- 骨粗鬆症の併存例では、ビスフォスフォネートやテリパラチドなどの薬物治療も併用を検討
🏥 ストレスシールディングを最小限に抑えるTHA戦略
- 個々の患者さんの骨質と解剖学的特性に応じたステム選択
- 術後も定期的なフォローアップと骨密度評価を実施
✍️ まとめ
ステム選択、材質、患者さんごとの計画的な手術がストレスシールディングの予防の鍵になります。
ストレスシールディングとは、人工関節によって骨にかかる力が減り、骨が弱くなる現象です。
長期的な人工関節の安定性や再置換時の骨質に影響を与える可能性があるため、可能な範囲で骨が弱くならないように予防していきましょう。
定期的な検診と骨粗鬆症の治療が重要です。
骨が脆くなりすぎてからでは、元に戻すのが難しくなりますからね…汗。
以上、参考になりましたでしょうか?
では、また!
人工股関節置換術後は時間経過と共にストレスシールディングが出る事あるので要注意。

「女性が好きなパンケーキ!」
たまにパンケーキを口いっぱいに頬張りたくなる整形外科医の塗山正宏でした!
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医


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