膝関節200 人工膝関節全置換術とSubvastus approach

手術方法 膝関節

おはようございます!
今日も頑張ってブログを書き続けているブロガー塗山です。






今回のテーマは、

人工膝関節全置換術とSubvastus approachについてです。

塗山先生
塗山先生

今日は人工膝関節の手術についてです。

しおりさん
しおりさん

先生、教えてください!




はじめに

人工膝関節全置換術(TKA:Total Knee Arthroplasty)は、変形性膝関節症の進行により日常生活が困難になった患者さんに対して行われる代表的な手術です。

その中で、手術時に選択されるアプローチ(皮膚や筋肉の切開ルート)は、術後の回復や機能予後に大きな影響を与えることが知られています。

本記事では、侵襲が小さいとされているSubvastusアプローチについて、その特徴と利点、課題点、そして従来の方法(medial parapatellar approach)との比較を交えながら解説します。


1. Subvastus approachとは?

Subvastus approach(サブバスタス・アプローチ)は、内側広筋(vastus medialis)の下を通って関節包にアプローチする術式です。筋腱を切離せず、筋肉の温存が可能なため、「筋温存アプローチ」とも呼ばれます。

主な特徴

  • 内側広筋を切らずにその下から進入
  • 関節包の一部と内側支持組織を切開してアプローチ
  • 膝蓋骨(膝のお皿)を外側に反転せず、そのまま操作することも可能


2. Subvastus approachの利点

① 筋損傷が少ない

Subvastusアプローチでは、膝伸展機構の主要構成である内側広筋の腱付着部を温存できます。これにより術後の膝伸展力の回復が早く、早期リハビリに有利です(Matsueda et al., 2004)。

② 術後疼痛の軽減

筋温存により術後の炎症や出血が少なく、術後疼痛の軽減が期待されます。

疼痛が少ないことは、早期離床・早期退院にもつながります。

③ 膝蓋骨亜脱臼のリスクが低い

膝蓋骨の過度な外反転を避けることができるため、術後の膝蓋骨不安定性や脱臼リスクを軽減するという報告があります(Dalury et al., 2010)。


3. Subvastus approachの課題点

① 視野が狭い

筋肉を温存する反面、術野が制限されるため、重度の変形や肥満患者では手術操作が難しい場合があります。

② 骨切りやインプラント設置の正確性

視野制限があるため、骨切りやインプラントのアライメント確保に技術を要することが課題とされます。

③ 習熟に時間がかかる

サブバスタスアプローチは一般的な内側正中アプローチと比べて習得に経験が必要とされています。

熟練した術者であれば、メリットを最大限に引き出せます。


4. 他アプローチとの比較

特徴Subvastus approachMedial Parapatellar approach(従来法)
筋温存×(内側広筋の腱切開あり)
術野の広さ△(狭い)◎(広い)
術後疼痛少なめやや多め
伸展機能の回復早いやや遅い
膝蓋骨の反転軽度可能(大きく外反転)




5. Subvastus approachが適する患者とは?

  • 比較的軽度〜中等度の変形のある患者さん
  • 標準体型またはやや痩せ型
  • 膝蓋骨の不安定性が予測される場合


6. 参考文献

  • Matsueda M, et al. (2004). Subvastus approach is advantageous for early postoperative recovery after total knee arthroplasty. J Arthroplasty.
     → Subvastusアプローチの術後回復に関する臨床研究。伸展機能と疼痛軽減に有利と報告。
  • Dalury DF, et al. (2010). Comparison of the subvastus and medial parapatellar approaches in total knee arthroplasty. Clin Orthop Relat Res.
     → Subvastusと従来法の術後成績比較。膝蓋骨安定性と患者満足度に差があることを示す。
  • Bäthis H, et al. (2004). Minimally invasive surgery in total knee arthroplasty: a comparative study. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc.
     → 低侵襲手術としてのSubvastusアプローチの利点と課題をレビュー。


7. まとめ

Subvastus approachは筋肉を温存しながら人工膝関節を挿入できる低侵襲な手術方法です。

術後疼痛の軽減や伸展機能の早期回復といったメリットがあります。

一方で術野の制限があり、適応患者の選択や術者の技術が重要です。

個々の患者さんの変形の程度や解剖学的特性に応じて、最適なアプローチを選択することが大切です。

以上、参考になりましたでしょうか?

では、また!



Subvastus approachは侵襲が少ないアプローチ!

剣道

「めーーーん!!」


剣道はまだ人生で1回もやったことがない整形外科医の塗山正宏でした!

【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医

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