おはようございます!
オムライスが割と好きな塗山です。
ふわとろタイプが好きですね笑。
今回のテーマは、
人工膝関節置換術後の内側側副靭帯断裂についてです。

内側側副靭帯って知ってますか?

なんかの靭帯ですか?
【人工膝関節置換術後の注意点】内側側副靭帯(MCL)断裂とは?
こんにちは!整形外科医の塗山正宏です。
お待たせしました!膝について語る時間がやってまいりました。
人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty:TKA)は、変形性膝関節症などの治療として非常に効果的な手術です。
しかし、術後にまれではありますが「内側側副靭帯(MCL)の断裂」というトラブルが発生することがあります。
内側側副靭帯は膝の内側を支える重要な靭帯です。
断裂が起きると膝の安定性が損なわれ、歩行や日常生活にも大きな影響を及ぼします。
本記事では、人工膝関節置換術後の内側側副靭帯断裂の原因・診断・対処法について、文献をもとに整形外科医の塗山正宏医師が詳しく解説していきます。
🔍 内側側副靭帯(MCL)とは?
内側側副靭帯(MCL:medial collateral ligament)は、大腿骨の内側から脛骨の内側に向かって走る強靭な靭帯で、膝関節の内反(内側へのぐらつき)を制御しています。
人工膝関節置換術では通常、内側側副靭帯は温存され、靭帯バランスを保ちながら人工関節が設置されます。
🩺 なぜ人工膝関節手術後に内側側副靭帯が断裂するのか?
【原因①】術中の損傷
- 骨切りや人工関節の設置時に内側側副靭帯が牽引・切離・熱損傷を受ける場合があります。
📘 Rand JA, Ilstrup DM. Clin Orthop Relat Res. 1991;271:63-71.
→ 人工膝関節置換術中に内側側副靭帯を損傷するリスクは約1〜2%と報告。
【原因②】術後の外傷
- 転倒や過伸展により、術後に内側側副靭帯が部分断裂や完全断裂を起こすことがあります。
【原因③】不適切な靭帯バランス
- インプラント設置時に内外側の靭帯の緊張バランスが崩れると、内側側副靭帯に負担が集中します。
⚠️ 内側側副靭帯断裂の症状
主な症状 | 内容 |
---|---|
膝の不安定感 | 歩行時に「ぐらつく」感じ |
膝の内側痛 | 歩行や屈伸時に痛み |
可動域の制限 | 膝が曲げづらくなることも |
腫れ | 外傷による断裂では出血や腫れを伴う |
🧪 診断方法
- ストレステスト(内反ストレステスト):膝のぐらつきの有無を評価
- X線検査:インプラントのゆるみや位置の異常を確認
- MRI:内側側副靭帯の損傷部位を可視化(特に術後の部分断裂評価に有用)
- 超音波検査:動的評価も可能
🔧 内側側副靭帯断裂の治療方法
✅ 保存療法(部分断裂や軽度不安定性)
- ヒンジ付き膝装具(knee brace)の装着
- 免荷歩行+リハビリ
- 鎮痛薬(NSAIDs)などによる疼痛コントロール
📘 Vince KG. J Arthroplasty. 2003;18(3 Suppl 1):19-23.
→ 軽度損傷では保存療法で良好な結果が得られると報告。
✅ 手術療法(完全断裂や不安定性が強い場合)
① 再建術(靭帯修復 or 強化)
- 人工靭帯や半腱様筋腱を用いた再建術
② 関節インプラントの再置換
- 拘束型インプラント(CCK:Constrained Condylar Kneeやヒンジ型)に変更し、内側側副靭帯の安定性を補完
📘 Rorabeck CH et al. Orthop Clin North Am. 2001;32(4):645-652.
📈 人工膝関節置換術で内側側副靭帯断裂を予防するための工夫
対策 | 内容 |
---|---|
術前評価 | 内側靭帯の緊張と変形の程度を把握 |
靭帯の保護 | 骨切り・開創時にMCLを可視化し損傷回避 |
適切なインプラント選択 | 不安定性の程度に応じて拘束度を調整 |
術後の転倒予防 | リハビリ中の歩行補助具使用の徹底 |
📝 まとめ
術中の丁寧な操作と、術後の転倒予防が内側側副靭帯断裂のリスク軽減につながります。
内側側副靭帯断裂は人工膝関節置換術後のまれな合併症ですが、重大な合併症のひとつです。
内側側副靭帯損傷は、術中の損傷、術後の外傷、不適切な靭帯バランスが主な原因となります。
治療は保存療法から再建術・再置換まで症状や膝関節の状態に応じて選択します。
膝関節にとって内側側副靭帯はとても大事な靭帯です。
術後は損傷しないように気をつけていきましょう!!
以上、参考になりましたでしょうか?
では、さらば!
人工膝関節置換術後に内側側副靭帯を損傷すると歩行の不安定性につながるので要注意!

「小指!小指!」
来世は演歌歌手に生まれかわるかもしれない整形外科医の塗山正宏でした!
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医
コメント