膝関節219 変形性膝関節症と鵞足炎

鵞足炎 膝関節


おはようございます!
メリークリスマス!
怪我には日頃から気をつけている塗山です。





今回のテーマは、

変形性膝関節症と鵞足炎についてです。






塗山先生
塗山先生

鵞足炎って知ってますか?

ごんぞうさん
ごんぞうさん

知りまへんなぁ…。




こんにちは~!整形外科医の塗山正宏で~す。

今日も張り切って膝についての話をしていきましょうか!

膝の痛みを訴える患者さんの中で「変形性膝関節症」と診断される方は非常に多いですが、その中でも膝の内側の下あたりがズキズキ痛むと訴えるケースがあります。

これは鵞足炎(がそくえん)と呼ばれる病態で、変形性膝関節症と深い関係があります。

本記事では、変形性膝関節症と鵞足炎の関連性、原因、症状、治療法について整形外科医の塗山正宏が笑顔を振りまきながら詳しく解説していきます。


1. 鵞足炎とは?

鵞足炎とは、膝の内側(脛骨内側部)に付着する3つの筋肉(薄筋、縫工筋、半腱様筋)の腱が集まる部位で炎症が生じる疾患です。

見た目がガチョウの足のように広がっているため「鵞足(がそく)」と呼ばれています。

  • 薄筋(太ももの内側の筋肉)
  • 縫工筋(太ももの前内側から走る細長い筋肉)
  • 半腱様筋(ハムストリングの一部で膝裏から内側に付着する筋肉)

これらの腱が集まる部位に摩擦や牽引ストレスがかかると炎症を起こし、膝の内側の下方に痛みを生じます。



2. 変形性膝関節症と鵞足炎の関係

変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減ることで関節の変形や炎症を引き起こす疾患です。

変形性膝関節症が進行すると、次のような理由から鵞足炎が合併しやすくなります。

  1. 内反膝(O脚)の進行
     変形性膝関節症では膝の内側に荷重が集中しやすく、鵞足部へのストレスが増大します。
  2. 歩行時のバランス変化
     関節の変形により膝の安定性が低下し、鵞足部の腱に余計な負担がかかります。
  3. 炎症の波及
     膝関節内の炎症が鵞足部周囲の滑液包に波及し、二次的に鵞足炎が生じます。

実際、文献でも変形性膝関節症患者の20〜30%で鵞足部の圧痛や炎症が認められると報告されています(Uysal et al., 2008)。


3. 鵞足炎の症状

  • 膝の内側下部(関節よりやや下)に限局した痛み
  • 押すと痛い(圧痛点がはっきりしている)
  • 階段昇降や立ち上がり動作で痛みが強くなる
  • 膝関節内の痛み(変形性膝関節症の典型症状)とは少し部位が違う

特に、夜寝ているときに膝の内側がズキズキすると訴える方も多く、生活の質を下げる原因となります。


4. 鵞足炎と変形性膝関節症の鑑別

膝の内側が痛い場合、変形性膝関節症の関節内の痛みなのか、それとも鵞足炎によるものなのかを区別することが重要です。

  • 膝関節裂隙(関節の隙間)に沿った圧痛 → 変形性膝関節症の可能性大
  • 脛骨内側の少し下(関節裂隙より3〜5cm下)に圧痛 → 鵞足炎を疑う

超音波検査(エコー)で鵞足部の滑液包の腫れを確認できる場合もあります。


5. 鵞足炎の治療法

1. 保存療法

  • 安静と生活指導
     長時間の歩行や階段昇降を避け、膝への負担を軽減します。
  • ストレッチ
     ハムストリングや内転筋の柔軟性を高めることで腱の緊張を和らげます。
  • 物理療法
     温熱療法や超音波治療で血流改善を図ります。

2. 薬物療法

  • 消炎鎮痛薬(NSAIDs)の内服や外用薬が有効です。

3. 注射治療

  • 鵞足部にステロイド注射を行うことで炎症が速やかに改善するケースがあります。
    (ただし頻回の注射は腱障害のリスクがあるため注意が必要です)

4. リハビリテーション

  • 筋力強化(大腿四頭筋・ハムストリング)
  • 股関節や体幹の安定性を高める運動療法



6. 鵞足炎予防のためのストレッチ例

  1. ハムストリングストレッチ
     椅子に浅く腰掛け、片脚を前に伸ばして上体を前傾させる。
  2. 内転筋ストレッチ
     立位で脚を広げて片方に体重を移し、太ももの内側を伸ばす。
  3. 股関節外転筋トレーニング
     横向きで寝て脚をゆっくり持ち上げる運動。

これらを毎日少しずつ取り入れることで、鵞足部への負担を減らすことができます。


7. 文献紹介

  • Uysal, F. G., Akpinar, S., et al. (2008). Pes anserinus bursitis in patients with osteoarthritis of the knee. Clinical Rheumatology, 27(9), 1081-1085.
  • Khan, K. M., et al. (2000). Pes anserinus tendinobursitis: diagnosis and management. Sports Medicine, 29(3), 207-220.
  • Laprade, R. F., et al. (1998). Anatomy and biomechanics of the pes anserinus. Knee Surgery, Sports Traumatology, Arthroscopy, 6(1), 2-8.


8. まとめ

変形性膝関節症では膝の内側に痛みが出やすく、その一部は鵞足炎が原因となっています。

鵞足炎は膝の少し下にある腱の炎症で、局所の圧痛が特徴です。

保存療法、薬物療法、ストレッチやリハビリで改善するケースが多いです。

変形性膝関節症と併存している場合は、両者を意識した治療が必要になります。

膝の内側が痛むときには「関節内の痛み」だけでなく「鵞足炎」も考慮して診断・治療を進めることが大切です。

以上、参考になりましたでしょうか!?

では、さらば!


変形性膝関節症と鵞足炎は合併する事があるので要注意。

「いちごのショートケーキ!!」


ケーキと言えばショートケーキが好きな整形外科医の塗山正宏でした!


【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医

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