おはようございます!
蹴りの中ではローキックが好きな塗山正宏です。
今回のテーマは、
骨粗鬆症と顎骨壊死についてです。
骨粗鬆症の代表的な薬にビスフォスフォネート(bisphosphonate)という薬があり、その副作用に顎骨壊死というものがあります。
顎骨壊死という病気は、「あごの骨の組織や細胞が局所的に死滅し、骨が腐った状態になること」です。
では、本日のテーマに入ります。
「歯科治療をする際に、ビスフォスフォネートのお薬をお休みする必要があるのかどうか?」という話です。
ここでひとつの論文を紹介します。
侵襲的歯科治療前の ビスフォスフォネート 休薬(BP:ビスフォスフォネート)
骨吸収抑制薬の治療を受けている患者に対して歯科治療を行う際に、骨吸収抑制薬投与をそのまま継続するか、あるいは休薬するかについては様々な議論がある。
① 骨吸収抑制薬の休薬が顎骨壊死発生を予防するか否かは不明である。
② 骨に長期間残留するBPの物理化学的性質から推測すると、短期間のBP休薬が顎骨壊死発生予防に効果を示すか否かは不明である。
③ 日本骨粗鬆症学会が行った調査結果では、骨粗鬆症患者においてBPを予防的に休薬しても 顎骨壊死発生の減少は認められていない。
④ BP の休薬により骨粗鬆症患者での症状悪化、骨密度低下および骨折の発生が増加する 。
⑤ 発生頻度に基づいた場合に顎骨壊死発生のリスクよりも骨折予防のベネフィット(有益な効果)がまさっている。
⑥ 顎骨壊死発生は感染が引き金となっており、歯科治療前に感染予防を十分に行えば 顎骨壊死発生は減少するとの結果が示されている。
この報告で注目されるのは、口腔の他の部位に以前に顎骨壊死が発生したことがあり、顎骨壊死発生のリスクがきわめて高いがん患者においても、感染を予防すれば新たな顎骨壊死は発生しなかったという結果である。したがって顎骨壊死発生予防には感染予防がきわめて効果的、重要であることが示唆される。
⑦ 米国歯科医師会は、骨粗鬆症患者における顎骨壊死の発生頻度は最大に見積もっても 0.1%程度であり、骨吸収抑制薬治療による骨折予防のベネフィット(有益な効果)は、顎骨壊死発生のリスクを上回っており、また骨吸収抑制薬の休薬は顎骨壊死発生リスクを減少させる可能性は少なく、むしろ骨折リスクを高め負の効果をもたらすとの見解を示している。
(骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理 :顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー 2016より引用)
このペーパーからは、基本的には「歯科治療を行う際にビスフォスフォネート系薬剤は中止する必要がない」ということになります。
もちろん個人の状況によっては変わる可能性もあったりはしますが。
外来をやっていると、
「歯医者さんに骨のお薬は辞めなければ治療できない!と言われた」
という患者さんはそこそこいらっしゃいます。
その時にはこの話をするようにしています。
それでも歯医者の先生の中には「薬を辞めないと絶対に治療しない」という先生もおられるようなので、その時には仕方なしに一時的に中断するしかないですね。
しかし、数年するとまた新しい見解になる可能性もあるため、治療方針が変わるかもしれませんが・・・。
医療というのは日進月歩の世界ですからね!
歯科治療を行う際にビスフォスフォネート系薬剤は必ずしも中止する必要がない!
「餃子パーティーしませんか?」
餃子があればご飯を何杯でも食べられる整形外科医の塗山正宏でした。
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医
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