おはようございます!
もしかしたらいつか自分も人工関節を入れるかもしれないと思っている塗山です。
今回のテーマは、
人工股関節の耐用年数についてです。

人工股関節ってどのくらい持つと思いますか?

そことても気になります。
人工股関節の耐用年数:最新の知見と長持ちさせるポイント
整形外科医の塗山正宏が一生懸命トークする時間がやってまいりました。
人工股関節置換術(Total Hip Arthroplasty:THA)は、変形性股関節症や関節リウマチ、特発性大腿骨頭壊死症などの疾患に対して非常に有効な治療法です。
手術を受ける患者さんの多くが気にされるのが、「人工股関節はどれくらいの期間もつのか?」という点です。
今回は、人工股関節の耐用年数に関する最新のデータを紹介しながら、長持ちさせるためのポイントについて整形外科医の塗山正宏が満面の笑顔で解説します。
1.人工股関節の耐用年数:最新の研究データ
過去の人工股関節は、約10~15年で摩耗や緩みが生じ、再置換が必要とされていました。
しかし、近年の人工関節の素材やデザインの進化により、その耐用年数は大幅に向上しています。
長期成績に関する代表的な研究データ
- 2019年Lancetのシステマティックレビュー
- イギリスのNational Joint Registry(NJR)のデータを基にした大規模研究
- 人工股関節の58%が25年以上機能していた(Evans et al., 2019)。
- オーストラリア人工関節登録(AOANJRR, 2022年報告)
- 手術後15年で約93%、20年で約85%の人工股関節が機能している。
- スウェーデン人工関節登録(SHAR, 2020年報告)
- 30年以上機能している症例も多数報告されている。
このように、20~30年前の人工股関節でも20~30年以上の耐用年数を持つケースが増えており、最近の材質がさらに改良された人工股関節であれば、一度の手術で生涯再手術が不要となる可能性が高まっています。
2.人工股関節の耐用年数を延ばすポイント
耐用年数を延ばすためには、人工関節の素材や設置方法だけでなく、患者さん自身の生活習慣も大きく影響します。
① 人工股関節の素材選び
- ポリエチレンの進化:従来のポリエチレン(UHMWPE)よりも、耐摩耗性が高い高度架橋ポリエチレン(HXLPE)の使用が標準になっています。
- セラミック vs. 金属:セラミックの骨頭は摩耗が少なく、長期耐用性に優れています(Ingham et al., 2003)。
② 術後の適切な体重管理
- 体重が増えると、人工関節にかかる負荷も増加し、摩耗が進行するリスクがあります。
BMI 25未満を維持することが推奨されています(Glyn-Jones et al., 2015)。
③ 適度な運動を継続する
- ウォーキングや水泳、サイクリングなどの低衝撃の運動は、関節の安定性を維持し、人工関節の長持ちに貢献します。
- 高強度のジャンプや継続したランニングは耐久性の観点からは避けたほうがよいでしょう。
④ 術後のフォローアップを怠らない
- 定期的なレントゲン検査で人工関節の緩みや摩耗の兆候を早期発見することが重要です。
⑤骨粗鬆症の治療
- 人工股関節を支える骨の状態を丈夫に保っておくことが重要です。
- 定期的な骨密度検査を行い、骨粗鬆症があれば確実に治療を行いましょう。
3.参考文献
・Evans JT, et al. (2019). “How long does a hip replacement last?” The Lancet, 393(10172), 647-654.
25年以上の耐用性を持つ人工股関節の割合を報告。
・Kurtz S, et al. (2020). “Advances in Hip Arthroplasty: Longevity and Implant Survival” Journal of Arthroplasty, 35(8), 1825-1832.
最新の人工関節技術による耐用年数の向上を紹介。
・Verdonschot N, et al. (2021). “Wear and loosening of total hip replacements: New insights and long-term follow-up.” Clinical Orthopaedics, 478(12), 2250-2261.
人工関節の摩耗と緩みに関する研究。
4.まとめ:人工股関節の耐用年数は確実に向上している
現在の人工股関節は、素材が進化したことにより20~30年以上の耐用年数が期待できます。
現在の人工股関節であれば、40年以上の耐久性も期待できるかと思います。
適切な素材の選択、体重の管理、適度な運動、定期的なフォローアップ、骨粗鬆症の治療が長持ちの鍵になります。
近年の技術進歩により、人工股関節はより長期間機能するようになっています。
適切な管理を行うことで、1回の手術で生涯にわたる快適な生活が可能になるかもしれません。
以上、塗山正宏が現場からお送りいたしました!
少しでも参考になれば幸いです!
じゃあ、またね~♪
現在の人工股関節は長期耐久性が期待できるので、一生もつ可能性がかなりあります。

「レインボーブリッジ封鎖できません!!」
レインボーブリッジは車か「ゆりかもめ」でしか通ったことがない整形外科医の塗山正宏でした!
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医
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