おはようございます!
お腹に脂肪は蓄えたくない塗山です。
今回のテーマは、
変形性膝関節症と脂肪幹細胞注射についてです。

脂肪幹細胞注射知ってますか?

知りません!
🦵変形性膝関節症に対する脂肪幹細胞注射
〜膝がよみがえる?再生医療の期待と現実〜
こんにちは。整形外科医の塗山正宏です。
今回は、近年注目されている再生医療、「脂肪幹細胞を用いた治療」についてお話しします。
外来でよく聞かれる質問のひとつが、

先生、脂肪幹細胞を膝に注射すると軟骨が復活するんですか?
これ、患者さんの表情はキラキラ、一方、私の心の声はこうです。

(そんなに簡単に復活してくれたら、私の仕事はもっと楽なんですが(笑))
しかし、期待を持つのは間違いではありません。
実際に、脂肪由来幹細胞(ADSC:Adipose-Derived Stem Cells)は世界中で研究され、変形性膝関節症の新たな選択肢として注目されています。
🧬脂肪幹細胞とは?
脂肪幹細胞は、体の脂肪組織から取り出せる多能性細胞で、炎症の抑制・組織修復の促進・成長因子の分泌など多くの働きを持っています。
つまり、注射すると膝関節内の環境を改善して、痛みを軽減する効果が期待できます。
ここで重要なポイントは、「軟骨が新品同様に復活するわけではない」ということ。
“劇的ビフォーアフター”ほどの変化はありません(笑)。
🧪脂肪幹細胞注射の仕組み
✔ 脂肪を少量採取
お腹や太ももなどから脂肪(少量)を採取します。
※ここを喜ぶ方が一定数いますが、採取する量はわずかです(笑)
✔ 幹細胞の抽出・濃縮
採取した脂肪から幹細胞成分を取り出し、培養して高濃度にします。
✔ 膝関節内に注射
痛み・炎症の改善が期待されます。
治療時間は短く、比較的低侵襲であることも魅力の一つです。
📈脂肪幹細胞注射の効果:何が期待できる?
文献では、以下のような効果が報告されています。
✔ 痛みの軽減
- Jo et al.(2014):高濃度の脂肪幹細胞投与で痛みの有意な改善がみられた。
- Song et al.(2018):中等度OAで疼痛スコアが改善。
✔ 歩行機能の改善
- Kim et al.(2019):歩行距離や膝機能スコアが改善。
✔ 炎症抑制作用
幹細胞が分泌するサイトカインが、関節内の炎症を抑える働きを持つ。
✔ 軟骨の部分的修復の報告も
MRI上で軟骨の厚みがわずかに改善した例もありますが、これはあくまで“おまけ程度”と考えてください。
「人工関節手術が不要になるほど回復する!」というような誇張表現には気をつけましょう。
🦵どんな人が向いている?
以下のような方に適した治療とされています。
- 変形性膝関節症の中等度(K-Lグレード2〜3)
- 手術はまだ早いが、痛みが強くなってきた方
- 薬・ヒアルロン酸注射で効果が乏しい方
- 日常生活やスポーツ活動を改善したい方
逆に、重度変形(K-L 4)には効果が限定的です。

Grade 0 :正常
GradeⅠ:関節裂隙狭小のないわずかの骨棘形成 , または軟骨下骨硬化
GradeⅡ:関節裂隙狭小(25% 以下)あるも骨変化なし
GradeⅢ:関節狭小(50%~75%)と骨棘形成 , 骨硬化像
GradeⅣ:骨変化が著しく,関節裂隙狭小(75% 以上)を伴う
“超ボロボロの膝に奇跡を”というのは、さすがに難しい話なのです。
⚠ 脂肪幹細胞治療の注意点
✔ 保険適用外で費用が高い
いわゆる自費診療となり、治療費が高額になります(100万円以上)。
✔ 治療施設によって質が異なる
幹細胞の数・抽出法・管理体制に差があります。
“やたらキラキラした広告”ではなく、医学的根拠を示すクリニックを選びましょう。
✔ 効果には個人差がある
どんなに優秀な幹細胞でも、魔法使いではありません(←ここ重要)。
🕺整形外科医塗山の本音
脂肪幹細胞注射は、変形性膝関節症の治療として魅力のある選択肢のひとつかもしれません。
ただ、「じゃあ先生、これで若い頃の膝に戻れますね!」という質問には、私は微笑みながらこう言わせてください。

気持ちは若いままで大丈夫です。でも膝は現実的にいきましょう(笑)
でも実際、痛みが軽くなることで
「散歩が再開できた」
「また旅行を楽しめるようになった」
という方もいるので、
日常生活の質を上げる治療としては期待してもいいかもしれません。
📚文献
- Jo CH et al. Intra-articular injection of mesenchymal stem cells for the treatment of osteoarthritis of the knee: a proof-of-concept clinical trial. Stem Cells. 2014.
- Song Y et al. Mesenchymal stem cell therapy for osteoarthritis: a systematic review. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2018.
- Kim YS et al. Clinical outcomes of mesenchymal stem cell therapy for knee osteoarthritis. Am J Sports Med. 2019.
- Freitag J et al. Adipose-derived mesenchymal stem cell therapy in the treatment of knee osteoarthritis: a randomized controlled trial. J Transl Med. 2019.
📝まとめ
脂肪幹細胞注射は「若返りの魔法」ではないが、日常生活の質向上には大いに貢献できる可能性があります。
脂肪幹細胞注射は変形性膝関節症に対する治療の選択肢で、痛みの軽減や機能改善が期待できます。
ただし、軟骨が完全復活するわけではないし、可動域や変形が治るわけではないことを認識しておきましょう。
そして、費用・効果の個人差・施設の質には注意しましょう。
以上、参考になりましたでしょうか!?
では、また!!
脂肪幹細胞注射は魔法の注射ではないが、痛みが改善する可能性があります。

「エクレア!!」
エクレア食べると身体にしみると感じている整形外科医の塗山正宏でした!
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医


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