膝関節256 変形性膝関節症で水がたまるのは何故?

膝 膝関節

1. 「水を抜けば治る」は本当?整形外科医が本音で解説

整形外科医の塗山正宏です!

先生、また膝に水がたまりました…

変形性膝関節症の患者さんから、最もよく聞く言葉の一つです。

そして続いて、

水を抜くとクセになるって本当ですか?

という質問がほぼ100%続きます。

今回は、変形性膝関節症で膝に水がたまる本当の理由について、整形外科医塗山正宏が専門医の立場からわかりやすく解説します。

結論から言うと、

👉 膝に水がたまるのは“膝が悪化しているサイン”であり、“水が悪者”ではありません。

むしろ、水は膝からのSOSなのです。


2. 膝にたまる「水」の正体とは?

まず最初に誤解を解いておきましょう。

膝にたまる「水」は、

👉 ただの水ではありません。

正体は、関節液(かんせつえき)と呼ばれる液体です。

関節液には、

  • 関節の潤滑油
  • 軟骨への栄養供給
  • 衝撃吸収

という重要な役割があります。

つまり、膝の中では普段から関節液が作られているのです。


3. では、なぜ水がたまるの?

ここが最大のポイントです。

原因は「炎症」

変形性膝関節症では、軟骨がすり減ります。

すると、軟骨の破片や摩耗した組織が関節内に散らばり、それを滑膜(かつまく)が異物として認識します。

すると身体は、

「大変だ!膝の中で問題が起きている!」

と判断し、炎症反応を起こします。


4. 滑膜が頑張りすぎる

炎症が起こると、滑膜は関節液を大量に作り始めます。

本来は、膝を守ろうとする防御反応です。

しかし、作る量が吸収量を上回ると、関節内に液体がどんどん蓄積します。

これが、

👉 「膝に水がたまった状態(関節水腫)」

です。


5. 実は「水」が原因で痛いわけではない

ここは意外に思われるかもしれません。

患者さんは、「水がたまったから痛い」と思っています。

しかし、実際には

👉 炎症が痛みの原因

です。

水は結果にすぎません。

火事に例えると、

  • 炎症=火事
  • 水=消防車

です。

消防車がたくさん来ているから問題なのではなく、火事が起きていることが問題なのです。


6. 水がたまるとどんな症状が出る?

膝が腫れる

見た目でわかるほど腫れることがあります。

曲げ伸ばししにくい

膝の中がパンパンになるため、可動域が制限されます。

重だるい

患者さんはよく、

「膝の中に風船が入っている感じ」

と表現されます。

非常にわかりやすい表現です。

階段がつらい

特に下り階段で症状が悪化します。


7. 水を抜けば治るの?

答えは、

👉 NOです。

水を抜くと、

  • 圧迫感が減る
  • 動きやすくなる
  • 痛みが軽くなる

ことがあります。

しかし、炎症そのものが治ったわけではありません。

そのため、原因が残っていれば再び水はたまります。


8.「水を抜くとクセになる」は本当?

これは外来で最も多い都市伝説です。

結論。

👉 クセになりません。

医学的根拠はありません。

水を抜いたから再発するのではなく、炎症が続いているから再発するのです。

つまり、犯人は注射ではなく、変形性膝関節症そのものです。


9. 水がたまったら必ず抜くべき?

実はそうでもありません。

抜いた方がよい場合

  • 強く腫れている
  • 曲げられない
  • 痛みが強い
  • 感染や痛風との鑑別が必要

抜かなくてもよい場合

  • 少量
  • 症状が軽い
  • 自然に改善傾向




10. 水がたまりやすい人の特徴

① 膝の変形が進行している

軟骨摩耗が強いほど炎症が起こりやすくなります。

② 体重が増えている

膝への負荷が増えます。

③ 筋力低下

特に大腿四頭筋の弱化は影響が大きいです。

④ 活動量の急増

久しぶりの旅行や草むしりの後に、急に水がたまる方は珍しくありません。


11. ベーカー嚢腫との関係

膝の裏にコブのような腫れができることがあります。

これは

👉 ベーカー嚢腫

と呼ばれます。

膝関節内で増えた関節液が後方へ漏れ出した状態です。

「膝裏にゴルフボールが入っている感じ」と表現されることもあります。


12. 水をためないために大切なこと

適度な運動

動かさないことが必ずしも正解ではありません。

太ももの筋力強化

最も重要です。

体重管理

1kg減るだけでも膝への負担は大きく減少します。

炎症コントロール

必要に応じて

  • 消炎鎮痛薬
  • ヒアルロン酸注射
  • リハビリ

などを行います。


13. 整形外科専門医の本音

私は患者さんにこう説明しています。

塗山先生
塗山先生

水は敵ではありません。

水は、膝が一生懸命戦っている証拠です。

本当に治療すべきなのは、水ではなく

👉 その奥にある炎症

です。

水だけを見ていると、木を見て森を見ずになってしまいます。


14. まとめ

変形性膝関節症で水がたまる理由は、

👉 軟骨がすり減る

👉 滑膜に炎症が起きる

👉 関節液が増える

👉 水がたまる

という流れです。


15. 覚えておいてほしいポイント

✔ 水の正体は関節液
✔ 水は炎症の結果
✔ 水を抜いてもクセにはならない
✔ 原因治療が重要
✔ 筋力強化と体重管理が大切


16. 参考文献

1.Felson DT.:Osteoarthritis as a disease of mechanics.Osteoarthritis Cartilage.
2013;21(1):10-15.

変形性膝関節症における軟骨摩耗と滑膜炎の関係を解説した代表的論文。

2.Sellam J, Berenbaum F.:The role of synovitis in pathophysiology and clinical symptoms of osteoarthritis.
Nature Reviews Rheumatology.2010;6(11):625-635.

変形性膝関節症で関節液が増加するメカニズムを詳しく解説。

3.Scanzello CR, Goldring SR.:The role of synovitis in osteoarthritis pathogenesis.
Bone.2012;51(2):249-257.

滑膜炎が疼痛や関節液貯留に与える影響についてまとめた重要論文。

4.Hill CL, Hunter DJ, Niu J, et al.:Synovitis detected on magnetic resonance imaging and its relation to pain and cartilage loss in knee osteoarthritis.
Annals of the Rheumatic Diseases.2007;66(12):1599-1603.

MRIで確認される滑膜炎と膝痛・軟骨障害の関連を報告。

5.Roemer FW, Guermazi A, Felson DT, et al.:Presence of MRI-detected joint effusion and synovitis increases the risk of cartilage loss in knee osteoarthritis.
Arthritis & Rheumatism.2011;63(6):1637-1643.

関節液貯留が病気の進行と関連することを示した研究。


17. 塗山先生からのひと言

外来で、

「先生、水だけ抜いてください」

と言われることがあります。

お気持ちはよく分かります。

でも本当に大切なのは、

“なぜ水がたまったのか”を考えること。

膝は結果を教えてくれています。

そのサインを見逃さず、原因に向き合うことが、将来の人工膝関節を遠ざける一歩になるかもしれません。

以上、参考になりましたでしょうか!?

では、筋トレ行ってきます。

膝に水がたまる理由は、関節の中の炎症が原因です!






【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医

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