【専門医が解説】人工股関節術後に飛行機は乗れる?いつから搭乗できる?海外旅行・金属探知機・血栓予防まで徹底解説
こんにちは。整形外科医の塗山です。
人工股関節置換術(THA:Total hip arthroplasty)を受けた患者さんから、旅行シーズンになると必ずと言っていいほど聞かれる質問があります。
「先生、飛行機にはいつから乗れますか?」
「海外旅行は大丈夫でしょうか?」
「空港の金属探知機で止められませんか?」
旅行好きの方にとって、これはとても気になる問題ですよね。
せっかく股関節の痛みがなくなったのに、
「飛行機に乗れないなら旅行は無理…」
と思ってしまう方もいらっしゃいます。
でも安心してください。
人工股関節置換術を受けたからといって、飛行機に乗れなくなるわけではありません。
ただし、安全に旅行を楽しむためには知っておきたいポイントがあります。
今回は、
- 人工股関節術後はいつから飛行機に乗れる?
- 国内線と国際線で違いはある?
- エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)は大丈夫?
- 金属探知機は反応する?
- 快適に旅行するコツ
について、整形外科専門医の立場から整形外科医塗山が詳しく解説します。
1. 結論|人工股関節術後でも飛行機に乗ることはできます
まず結論です。
👉 人工股関節術後でも飛行機への搭乗は可能です。
実際、多くの患者さんが、
- 北海道旅行
- 沖縄旅行
- ハワイ旅行
- ヨーロッパ旅行
を楽しまれています。
つまり、
人工股関節は「旅行を諦める手術」ではなく、「旅行を取り戻す手術」なのです。
2. いつから飛行機に乗れる?
これが最も多い質問です。
実は、
「術後○日なら全員OK」という明確な国際基準はありません。
患者さんの状態や、
- 血栓症のリスク
- 飛行時間
- 回復状況
によって変わります。
近年のレビューでは、飛行機搭乗の適切な時期について明確なコンセンサスはなく、個々の患者のリスク評価が重要とされています。
私自身は一般的な目安として、
国内線(短時間)
術後4〜6週間頃
国際線(長時間)
術後3か月以降
を一つの目安としてお話しすることが多いですが、これはあくまで一般論です。
最終的には主治医の許可を得てから旅行を計画しましょう。
3. なぜ術後すぐの飛行機は注意が必要?
理由は一つです。
深部静脈血栓症(DVT)
手術後は、もともと血栓(血のかたまり)ができやすい状態です。
さらに、飛行機では長時間座ったままになります。
すると、
血液の流れが悪くなり、深部静脈血栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)のリスクが高くなります。
4. エコノミークラス症候群とは?
長時間同じ姿勢を続けることで、足の静脈に血栓ができる病気です。
もしその血栓が肺へ飛ぶと、肺塞栓症という重篤な病気になることがあります。
頻度は高くありませんが、絶対に軽く考えてはいけません。
5. 飛行機に乗るときの予防法
ここが一番大切です。
① 足首をよく動かす
30分ごとくらいに、足首を上下に動かしましょう。
これだけでも血流改善に役立ちます。
② 時々歩く
長距離便では、1〜2時間ごとに通路を歩くことをおすすめします。
トイレに行くついででも十分です。
③ 水分補給
機内は非常に乾燥しています。
脱水は血栓リスクを高めます。
アルコールより、まずはお水を飲みましょう(笑)。
④ 弾性ストッキング
血栓リスクが高い方では、弾性ストッキングの着用が勧められることがあります。
6. 長時間フライトは危険?
よく聞かれます。
答えは、
「リスクは上がりますが、適切な予防で安全に旅行できる方がほとんどです。」
4時間を超える長距離フライトでは血栓症リスクが高くなるため、個々のリスクに応じた予防対策が重要です。
7. 空港の金属探知機は反応する?
これも非常によく聞かれます。
答えは、
👉 反応することも、しないこともあります。
最近は全身スキャナーを使用する空港が増えており、
人工股関節があっても問題なく通過できることがほとんどです。
もし反応した場合でも、
保安検査員に
「人工股関節が入っています」
と伝えれば対応してもらえます。
「人工関節カード」は、保安検査目的では必須ではないです。
8. 座席選びのコツ
おすすめは、
✔ 通路側
です。
理由は、
いつでも歩けるから。
窓側で8時間我慢大会をする必要はありません(笑)。
9. 荷物はどうする?
術後早期は、重いスーツケースを持ち上げるのは避けましょう。
荷物棚への収納は、遠慮なく周囲や客室乗務員にお願いしてください。
「助けてもらう」のも旅行術の一つです。
10. 海外旅行で気を付けること
- 海外旅行保険へ加入
- 常用薬を十分持参
- 主治医へ相談
- 旅行先の医療機関を確認
この4つをおすすめします。
11. よくある誤解(外来あるある)
❌ 人工股関節になったら飛行機は禁止
→ 飛行機は利用できます。
❌ 金属探知機で必ず止められる
→ 必ずではありません。
❌ 一生海外旅行は無理
→ 多くの患者さんが海外旅行を楽しんでいます。
12. まとめ|人工股関節術後も旅行は楽しめます
人工股関節置換術後でも、飛行機に乗ることは十分可能です。
大切なのは、
- 血栓予防
- 無理をしない
- 主治医へ相談
- 水分補給
- 機内で体を動かす
この5つです。
旅行は、
股関節が治ったことを実感できる最高のイベントです。
ぜひ、安全に楽しんでください。
13. 最後に(整形外科医塗山からのひとこと)
私は人工股関節の患者さんに、「旅行へ行ってください。」とお話ししています。
なぜなら、
旅行へ行けるようになることが、人工股関節置換術の大きな目的の一つだからです。
ただし、
飛行機では、映画を3本連続で見ながら全く動かない……
これはおすすめしません(笑)。
映画の途中でも一度立ち上がってストレッチをしてください。
股関節も、きっと「ありがとう」と言ってくれるはずです笑。
14.❓よくある質問(FAQ)
Q. 人工股関節術後はいつから飛行機に乗れますか?
一般的には国内線で術後4〜6週間頃、長距離国際線では3か月頃が一つの目安ですが、回復状況や血栓リスクによって異なります。必ず主治医に相談してください。
Q. 金属探知機は反応しますか?
反応する場合もありますが、多くの空港では全身スキャナーが導入されており、大きな問題になることは少ないです。
Q. 長距離フライトでは何に注意すればいいですか?
こまめな水分補給、足首の運動、機内歩行、必要に応じた弾性ストッキングの使用が重要です。
Q. 飛行機で人工股関節が壊れることはありますか?
気圧の変化で人工股関節が壊れたり、ゆるんだりすることは通常ありません。
Q. 海外旅行前に診断書は必要ですか?
通常は不要ですが、航空会社や渡航先によっては医師の診断書を求められることがあります。事前に確認すると安心です。
📚参考文献
- Elmenawi KA, et al. When Is It Safe for Patients to Air Travel After Total Hip and Knee Arthroplasty: A Comprehensive Review. JBJS Reviews. 2025.
- Oputa T, et al. Is There a Consensus on Air Travel Following Hip and Knee Arthroplasty? Cureus. 2023.
- Cooper HJ, et al. Risk of Symptomatic Venous Thromboembolism Associated With Flying in the Early Postoperative Period Following Elective Total Hip and Knee Arthroplasty. J Arthroplasty. 2014.
- Ball ST, et al. Extended Travel after Hip Arthroplasty Surgery. Is it Safe? J Arthroplasty. 2007.
人工股関節置換術後は旅行を楽しみましょう!
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医


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