おはようございます!
今日も健康的に生きていきたい塗山です。
今回のテーマは、
変形性膝関節症と関節水腫についてです。

膝に水が溜まったことありますか?

何度か膝に水が溜まった事があるのよ…
変形性膝関節症と関節水腫:原因・症状・治療法
はじめに
整形外科医の塗山正宏が膝関節について語る時間がやってまいりました。
それでは今日もはじめていきます!
変形性膝関節症は、高齢者を中心に多くの人が悩まされる疾患であり、関節軟骨の摩耗や骨の変形によって膝の痛みや可動域制限が生じます。
その中でも「関節水腫(膝に水がたまる状態)」は、変形性膝関節症の患者さんに頻繁にみられる症状のひとつです。
なぜ膝に水がたまるのか、どのように対処すべきか、放置するとどうなるのかについて、整形外科医の塗山がやんわりと笑顔で解説します。
関節水腫とは?
関節水腫とは、関節内に過剰な滑液(関節液)が蓄積する状態を指します。
通常、関節液は関節の滑らかな動きを助ける働きを持っていますが、変形性膝関節症による炎症や機械的ストレスが原因で過剰に分泌されると、水がたまって膝が腫れたり、痛みが悪化したりします。
変形性膝関節症における関節水腫の原因
膝に水がたまる主な原因は、関節内の炎症と滑膜の刺激です。以下の要因が関与しています。
1. 関節軟骨の摩耗と炎症
変形性膝関節症では、関節軟骨が徐々に摩耗し、軟骨片や炎症性サイトカインが関節内に放出されることで、「滑膜炎(滑膜の炎症)」が生じます。
これにより滑膜細胞が過剰に関節液を分泌し、関節水腫が発生します。
2. 関節の機械的ストレスの増加
- 体重増加による負担(体重1kg増加すると膝には3〜5kgの負担増)
- 長時間の立ち仕事や膝を酷使する動作
- O脚(内反膝)やX脚(外反膝)による関節の不均衡なストレス
3. 滑膜の過剰反応
関節の炎症が慢性化すると、滑膜が厚くなり、持続的に関節液を過剰分泌することがあります。
これにより関節水腫が頻繁に再発しやすくなります。
4. 半月板損傷の合併
変形性膝関節症では、半月板の変性や断裂がしばしば見られます。
半月板が損傷すると、関節内の安定性が低下し、炎症の助長や関節液の過剰分泌が引き起こされます
関節水腫の症状
関節水腫の程度によって、以下のような症状が現れます。
軽度の関節水腫
✅ 膝の軽い腫れ
✅ 運動後の違和感
✅ 軽度のこわばり
中等度の関節水腫
✅ 膝の明らかな腫れ
✅ 曲げ伸ばしの制限(屈曲時のつっぱり感)
✅ 立ち上がりや歩行時の痛み
重度の関節水腫
✅ 皮膚がピンと張ったような膝の腫脹
✅ 可動域の大幅な制限(膝がほぼ動かせない)
✅ 強い痛みや熱感(急性の炎症を伴う場合)
関節水腫の治療法
1. 保存療法(初期治療)
① 生活習慣の改善
- 体重管理:減量により膝への負担を軽減。
- 膝に負担の少ない運動(水中ウォーキングや自転車エルゴメーター)。
② 運動療法
- 大腿四頭筋の強化(膝を支える筋力を向上)。
- ストレッチ(膝関節の可動域を維持)。
③ 装具療法
- 膝サポーターやインソールで関節への負担を軽減。
2. 薬物療法
- NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬):炎症と痛みの緩和。
- ヒアルロン酸注射:関節の潤滑作用を補う。
- ステロイド注射:強い炎症がある場合に有効(副作用があるため、頻回の使用は避ける)。
3. 関節穿刺(関節液の除去)
膝の腫れが著しい場合は、関節穿刺(関節液を抜く処置)を行います。
穿刺後は炎症を抑えるためにヒアルロン酸やステロイドの注入が併用されることもあります。
4. 手術療法(重症例)
保存療法で改善しない場合、以下の手術が検討されます。
- 関節鏡手術(半月板損傷や滑膜炎の除去)
- 高位脛骨骨切り術(脛骨を骨切りし下肢のバランスを変える)
- 人工膝関節置換術(変形性膝関節症が進行し日常生活に支障をきたす場合)
最新の研究・文献紹介
- McCully et al. (2010). “The clinical significance of joint effusion in osteoarthritis”. J Orthop Res.
- 関節水腫のメカニズムと炎症との関連についての研究。
- Felson DT et al. (2005). “Osteoarthritis: new insights. Part 1: the disease and its risk factors”. Ann Intern Med.
- 変形性関節症のリスク因子と関節炎の関係を解説。
- Hunter DJ et al. (2013). “Synovitis in knee osteoarthritis: relationship to pain and cartilage damage”. Osteoarthritis Cartilage.
- 滑膜炎と関節痛、軟骨損傷の関連を示した研究。
- Englund M et al. (2009). “Meniscal tear in knees without osteoarthritis”. N Engl J Med.
- 半月板損傷と関節症の進行に関する研究。
- Zhang W et al. (2010). “OARSI recommendations for the management of hip and knee osteoarthritis”. Osteoarthritis Cartilage.
- 変形性関節症の治療ガイドライン。
- 変形性関節症の治療ガイドライン。
まとめ
変形性膝関節症に伴う関節水腫は、炎症や関節内のストレスが原因で発生し、放置すると症状が悪化する可能性があります。
適切な体重管理、運動療法、薬物療法を組み合わせることで、膝の腫れや痛みを軽減できます。
膝の腫れや痛みが気になる方は、早めに整形外科を受診し、適切な治療を受けることをおすすめします。
ちなみに「膝の水を抜くと癖になる!」っていうのは都市伝説ですね笑。
抜いたからといって癖にはなりませんからご安心を。
では、また~!
変形性膝関節症が進行すると、膝に水が溜まりやすくなる!

「牡蠣とレモンの愛称は抜群!」
生牡蠣はいつ当たるのかわからないので基本食べない事にしている整形外科医の塗山正宏でした!
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医
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