【専門医が解説】人工股関節置換術後にお酒は飲める?飲酒はいつからOK?注意点を徹底解説
こんにちは。整形外科医の塗山ですよ!
人工股関節置換術(THA:Total hip arthroplasty)を受けた患者さんから、退院前によく聞かれる質問があります。
「先生、お酒はいつから飲めますか?」
「ビール1杯くらいなら大丈夫ですか?」
「晩酌が唯一の楽しみなんですが…。」
お気持ちはよく分かります。
手術という大仕事を終えて、

退院したら冷えたビールで乾杯!
と思っている方も少なくありません(笑)。
しかし、人工股関節術後の飲酒には、「いつから」「どのくらい」「何に注意するか」が非常に重要です。
今回は、
- 人工股関節術後に飲酒はできるのか?
- いつからお酒を飲んでもよいのか?
- 飲酒によるリスク
- 適量とはどれくらい?
- 人工股関節を長持ちさせるためのポイント
について、整形外科専門医の立場から塗山正宏が分かりやすく解説します。
1. 結論|人工股関節術後も飲酒は可能。ただし「時期」と「量」が重要です
まず結論です。
👉 人工股関節が入っていること自体が、お酒を飲んではいけない理由にはなりません。
つまり、
- ビール
- 日本酒
- ワイン
- 焼酎
- ウイスキー
などは、適切な時期と量であれば楽しむことができます。
ただし、
術後早期や痛み止めを内服中は控えるべきです。
2. いつから飲酒できる?
これが最も多い質問です。
実は、
「術後○日なら必ずOK」という決まりはありません。
一般的には、
✔ 傷が治っている
✔ 食事が普通に食べられる
✔ 痛み止め(特にオピオイド)を飲んでいない
✔ 主治医の許可がある
これらを満たした後が目安になります。
多くの患者さんでは、
術後2〜4週間以降を一つの目安として少量から再開することが多いですが、個人差があります。
3. 術後すぐに飲酒してはいけない理由
① 痛み止めとの相性が悪い
術後には、
- トラマドール(トラムセット)
- オキシコドン
- NSAIDs(ロキソニン、セレコキシブなど)
を服用していることがあります。
アルコールと一緒に飲むと、
- 強い眠気
- めまい
- 転倒
- 胃潰瘍・胃出血リスクの増加
などが起こる可能性があります。
つまり、
👉 「お酒+痛み止め」はおすすめできない組み合わせです。
② 転倒しやすくなる
術後しばらくは、まだ筋力も完全ではありません。
そこへアルコールが加わると、
- バランス能力低下
- 判断力低下
が起こります。
人工股関節にとって、最大の敵は「転倒」です。
実は股関節より、酔っぱらった本人の方が危ないことがあります(笑)。
③ 傷の治りに影響する可能性
大量飲酒は、
- 免疫力低下
- 創傷治癒遅延
- 感染リスク増加
につながることが知られています。
特にアルコール依存や多量飲酒は、人工関節置換術後の合併症や入院期間延長と関連することが報告されています。
4. 少量のお酒なら問題ない?
多くの方では、適量の飲酒であれば大きな問題になることは少ないと考えられています。
例えば、
- ビール350mL程度
- ワイングラス1杯程度
- 日本酒1合未満
くらいであれば、
体調が安定し薬を服用していなければ許容されることが多いでしょう。
ただし、毎日大量に飲むことはおすすめできません。
5. アルコールは人工股関節を傷める?
これはよくある誤解です。
答えは、
👉 直接人工股関節を傷めるわけではありません。
チタンやセラミックが、ビールで錆びたり、ワインで溶けたりすることはありません(笑)。
しかし、
大量飲酒によって
- 転倒
- 骨折
- 脱臼
のリスクは高くなります。
つまり、
人工関節ではなく、「飲み過ぎた本人」が危険なのです。
6. 飲酒と脱臼の関係
実は、人工股関節脱臼の原因の一つとして、飲酒による転倒や不注意が挙げられることがあります。
お酒を飲むと、
- 足を組む
- 深くしゃがむ
- バランスを崩す
など、
脱臼しやすい姿勢を無意識にとってしまうことがあります。
そのため、術後早期は特に注意が必要です。
7. お酒好きな患者さんへ私からのアドバイス
私は、
「絶対禁酒してください。」
とは言いません。
人生の楽しみは大切です。
ただ、人工股関節は、「長く付き合うパートナー」です。
だからこそ、飲み方も少しだけ大人になりましょう(笑)。
8. よくある誤解(外来あるある)
❌ 人工股関節になったら一生禁酒
→ そんなことはありません。
❌ ビールを飲むと人工関節が錆びる
→ 錆びません(笑)。
❌ ワインなら薬と一緒でも大丈夫
→ アルコールは種類ではなく「アルコール」です。
薬との併用は避けましょう。
9. まとめ|人工股関節術後も、お酒は「ほどほど」に楽しめます
人工股関節置換術後でも、適切な時期と適量であれば飲酒は可能です。
ただし、
- 痛み止め内服中
- 傷が治っていない
- 術後早期
- ふらつきがある
場合は控えましょう。
そして何より、飲み過ぎによる転倒だけは避けること。
これが人工股関節を長持ちさせる秘訣です。
10. 最後に(整形外科医塗山からのひとこと)
人工股関節置換術は、「我慢するための手術」ではありません。
「また人生を楽しむための手術」です。
旅行へ行く。
ゴルフをする。
温泉に入る。
そして、
友人と乾杯する。
そんな日常を取り戻すことが、この手術の本当の目的だと私は思っています。
ただし……

今日は調子がいいから5杯!
ではなく、

今日は人工股関節に乾杯だから1杯。
そのくらいが、股関節もきっと喜びます(笑)。
11. ❓よくある質問(FAQ)
Q. 人工股関節術後はいつからお酒を飲めますか?
一般的には、傷が治癒し、痛み止めを終了し、主治医の許可が得られてからです。
多くは術後2〜4週間以降が一つの目安ですが、個人差があります。
Q. ノンアルコールビールなら大丈夫ですか?
アルコールを含まない製品であれば、通常は問題ありません。ただし、微量のアルコールを含む商品もあるため表示を確認しましょう。
Q. 飲酒すると人工股関節の寿命は短くなりますか?
適量の飲酒そのものが人工関節を傷めるわけではありません。しかし、多量飲酒は転倒や合併症のリスクを高めるため注意が必要です。
Q. お祝いで1杯だけなら大丈夫?
薬を服用しておらず、体調が安定し、主治医の許可があれば問題ないことが多いでしょう。
12. 📚参考文献
- Enhanced Recovery After Surgery (ERAS®) Society. Consensus statement for perioperative care in total hip replacement. Acta Orthopaedica. 2020.
- Best MJ, et al. Alcohol Misuse is an Independent Risk Factor for Poorer Postoperative Outcomes Following Primary Total Hip and Total Knee Arthroplasty. J Arthroplasty. 2015.
- Naziri Q, et al. The Association of Alcohol Use Disorder with Perioperative Complications following Primary Total Hip Arthroplasty. Hip Pelvis. 2021.
人工股関節置換術後の早期の飲酒はほどほどにしましょう!
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医


コメント