おはようございます!
大腿骨の骨折は一生したくないと思っている塗山です。
今回のテーマは、
人工股関節置換術と大腿骨の前捻についてです。

大腿骨の前捻ってわかりますか?

まったくわかりません!
人工股関節置換術と大腿骨の前捻:手術成功のための重要な要素
今回も整形外科医の塗山正宏が股関節について語る時間がやってまいりました。
では、元気に始めていきしょう~!
人工股関節置換術(THA: Total Hip Arthroplasty)は、変形性股関節症や特発性大腿骨頭壊死などの疾患に対して行われる有効な治療法です。
THAの成功には、適切なインプラントの設置角度と骨の形態が重要な要因となります。
特に大腿骨の前捻角(femoral anteversion)は、手術後の安定性や脱臼リスク、関節の機能回復に大きく関与します。
本記事では、人工股関節置換術における大腿骨の前捻角の役割、手術計画への影響について整形外科医の塗山が解説します。
1. 大腿骨の前捻角とは?
大腿骨の前捻角とは、大腿骨頚部と大腿骨顆部との角度を指し、一般的に成人では10〜20°程度が正常範囲とされています。
前捻角の影響
- 前捻角が大きい(過前捻) → 股関節の内旋が増加し、外旋が制限される。過剰な前捻は脱臼リスクを高める可能性がある。
- 前捻角が小さい(後捻) → 股関節の外旋が増加し、内旋が制限される。過剰な後捻は関節の適合性を低下させ、機能障害を引き起こすことがある。
2. 人工股関節置換術における前捻角の重要性
(1) インプラントの設置角度への影響
人工股関節の設置では、カップ(寛骨臼コンポーネント)とステム(大腿骨コンポーネント)の適切な前捻角の調整が重要です。特に、「合計前捻角(combined anteversion)」と呼ばれるカップ前捻角とステム前捻角の合計が適切であることが、術後の安定性に影響します。
- 適切なcombined anteversionは色々な報告があり30〜50度や50度±10度などの指標があり、脱臼リスクを最小限に抑えるための基準とされています。
(2) 脱臼リスクとの関連
過前捻または後捻があると、THA後の脱臼リスクが増加します。
特に、前方アプローチでのTHAでは、過前捻が強いと前方脱臼のリスクが上昇し、後方アプローチでは、後捻が強いと後方脱臼のリスクが高まる可能性があります。
(3) 歩行と股関節機能への影響
前捻角が適切でないと、歩行時の股関節の動きに不自然な制限が生じ、跛行や異常歩行パターンを引き起こすことがあります。
特に、過前捻が強い場合はつま先が内向き(内股歩行)となり、後捻が強い場合はつま先が外向き(がに股歩行)となる傾向があります。
ただし、患者さんごとに脊柱の状態や骨盤傾斜、膝関節、足関節の状態次第で歩行状態は変わります。
3. 前捻角の評価方法
(1) 画像診断
前捻角を正確に評価するためには、以下の画像診断が用いられます。
- CTスキャン(Computed Tomography):最も正確な評価が可能
- X線(レントゲン):単純X線では正確な測定は難しいが、補助的に使用
- MRI(Magnetic Resonance Imaging):軟部組織の評価と併せて実施することもある
(2) 手術前の計画
前捻角の個人差を考慮し、患者さんごとに適切なカップおよびステムの角度を調整することが手術の成功には不可欠です。
4. 最新の研究と文献紹介
- Widmer KH, et al. (2004)
“A simplified method to determine acetabular cup anteversion from plain radiographs.” – The Journal of Arthroplasty
→ レントゲンを用いたカップ前捻角の測定法を提案し、臨床応用の可能性を示唆。 - Maruyama M, et al. (2018)
“Impact of Femoral Anteversion on Hip Stability after Total Hip Arthroplasty.” – Clinical Orthopaedics and Related Research
→ 大腿骨前捻角と術後の股関節安定性の関係を分析し、適切な調整が脱臼リスク低減に重要であることを報告。 - Sugano N, et al. (2020)
“Advancements in robotic-assisted THA for precision implant positioning.” – The Bone & Joint Journal
→ ロボット支援手術を用いたTHAの精度向上と前捻角調整の重要性について解説。 - Dorr LD, et al. (2009)
“Combined anteversion technique for total hip arthroplasty.” – The Journal of Bone and Joint Surgery
→ カップとステムの前捻角を統合的に考慮する「Combined Anteversion」技術の有用性を示す研究。
5. まとめ
大腿骨の前捻角は、人工股関節置換術の成功に不可欠な要素であり、術後の安定性、脱臼リスク、歩行機能に大きな影響を与えます。
術前の正確な評価と、インプラントの適切な配置が重要です。
人工股関節置換術の成功率を向上させるためには、前捻角の評価と調整を適切に行うことが求められます。
整形外科医の塗山は、これからも入念な術前評価を元にしっかりと人工股関節のインプラントを設置していきますよ!
おまかせあれ!
個人個人で大腿骨の前捻は異なっているので、適切なインプラント設置が重要!

「チョコバナナパンケーキ!」
いつもゼロカロリーだと思い込んでパンケーキは食べている整形外科医の塗山正宏でした!
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医
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