骨粗鬆症について整形外科医の塗山正宏が語ります。
骨粗鬆症とは「骨強度の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患」と定義されています。
骨強度というのは骨密度と骨質の2つの要因があり、骨強度の70%が骨密度、30%が骨質となります。日本では40歳以上の骨粗鬆症患者さんは1280万人(男性300万人、女性980万人)と推計されています。
骨折の危険因子には、骨密度の低下、既存骨折、喫煙、飲酒、ステロイド薬使用、骨折の家族歴、運動習慣、生活習慣、生活習慣病などがあります。
骨粗鬆症による代表的な骨折として、大腿骨近位部骨折と脊椎椎体骨折があります。
大腿骨近位部骨折は2007年に14万8100人となっていて、発生率は年々上昇しています。
また、脊椎椎体骨折は、70歳代前半の25%、80歳以上の43%にあるというデータがあります。
骨粗鬆症による大腿骨近位部骨折は移動能力や生活機能が低下するだけでなく、死亡率が上昇します。
低骨密度で椎体変形のある高齢女性は総死亡リスクが高く、脊椎椎体骨折の数が多いほどリスクが高くなります。大腿骨近位部骨折患者さんの10%が骨折後1年以内に死亡するというデータがあります。
骨粗鬆症治療の目的は骨折の予防であって、その中心となるのは大腿骨近位部骨折と脊椎椎体骨折の予防になります。
骨折リスクを低下させ健全な骨格を維持するには、薬物治療を基本として骨強度を維持、増大させるための運動を含めた生活習慣の確立が重要となります。
また、人工関節置換術後も骨粗鬆症の治療を行うことによって、人工関節のインプラント周囲の骨折の予防になり、結果的に人工関節を長持ちさせることに繋がります。
骨粗鬆症は症状がないからといって放置せずに、適切な治療を行うことによって生活レベルの低下を招く骨折の予防をしていきましょう。
参考文献:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版
骨粗鬆症のブログのまとめ
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医