膝関節251 人工膝関節 vs 再生医療|どちらを選ぶべきか専門医が本音で解説

膝関節

おはようございます!
ブッフェではとにかく腹いっぱい食べてしまう塗山です。




今回のテーマは、

人工膝関節 vs 再生医療についてです。




塗山先生
塗山先生

この質問はここ数年増えてますね~。

整形外科医の塗山正宏です。

「膝が痛いけれど、人工膝関節にするべきか、それとも再生医療で様子を見るべきか…」

外来で患者さんから非常によくいただく質問です。

最近はテレビやインターネットで「再生医療」という言葉を目にする機会が増え、「手術しないで治せるなら、そのほうがいいのでは?」と考えるのは当然です。

一方で、人工膝関節置換術(TKA:Total knee arthroplasy)は長い歴史があり、重度の変形性膝関節症に対する標準治療として確立されています。

つまり、

  • 再生医療=まだ自分の膝を活かしたい治療
  • 人工膝関節=傷んだ膝を新しく置き換える治療

なのですが、実際には「どちらが優れているか」ではなく、“どのタイミングの患者さんにどちらが合うか” が重要です。

今回は、整形外科医塗山として、人工膝関節と再生医療の違いを本音でわかりやすくお話しします。


1. そもそも人工膝関節とは?

人工膝関節置換術は、すり減ってしまった膝の軟骨や変形した骨を削り、金属やポリエチレンの人工関節に置き換える手術です。

こんな方に向いています。

✅ 強い痛みで歩行が困難
✅ O脚やX脚が進行している
✅ 夜間痛がある
✅ 保存療法で改善しない
✅ 日常生活に支障がある

人工膝関節は、「壊れたクッションを修理する」ではなく、「古い膝を新しい関節に交換する」イメージです。

家でいえば、ギシギシ鳴る床を補修するのではなく、床ごと張り替えるようなものです。

少し大掛かりですが、その分しっかり痛みを改善できます。


2. 再生医療とは?

再生医療には主に以下があります。

PRP療法

患者さん自身の血液から成長因子を取り出して注射する方法

幹細胞治療

脂肪から採取した幹細胞を関節内に注入する方法

目的は、

  • 炎症を抑える
  • 痛みを軽減する
  • 軟骨の環境改善
  • 膝機能の維持

つまり再生医療は「膝を交換する」のではなく、膝を守る治療です。


3. 人工膝関節と再生医療の違いを比較

項目人工膝関節再生医療
痛み改善非常に高い中等度
効果の持続長い個人差あり
侵襲手術あり注射のみ
回復期間数週間〜数か月数週間
費用保険適用自費
適応重度変形軽〜中等度

ポイントは
「重症なら人工膝関節」
・「初期〜中期なら再生医療を検討」

ということです。


4. 再生医療が向いている人

以下のような方では再生医療が選択肢になります。

① まだ変形が軽い

レントゲンで関節の隙間が残っている

② 手術を急ぎたくない

仕事や家庭の事情ですぐ入院できない

③ スポーツを続けたい

自分の膝をできるだけ残したい

④ まずは保存療法を試したい

手術に抵抗がある

「まだ人工膝関節は早いかな…」という方には検討価値があります。


5. 人工膝関節が向いている人

逆に以下では人工膝関節のほうが現実的です。

① 骨の変形が強い

O脚がかなり進んでいる

② 歩くのがつらい

100m歩くのも困難

③ 夜も痛い

痛みで目が覚めてしまう。

④ 再生医療では難しい

軟骨がほぼ消失している

この段階で再生医療だけに期待しすぎると、

例えるなら

「タイヤがない車に空気を入れようとしている」

ようなものです…汗。

根本改善には人工膝関節の方が適しています。


6. 専門医の本音|どちらを選ぶべき?

私の本音としては、

軽度〜中等度なら

再生医療を検討してもよい

重度変形なら

人工膝関節のほうが満足度が高い

です。

最近は再生医療が注目されていますが、万能ではありません。

一方で人工膝関節も、「最後の手段」ではなく生活を取り戻す治療です。

「手術=負け」ではありません。

むしろ、「もう少し早く手術すればよかった」とおっしゃる患者さんが多いです。


7. 迷ったときの判断ポイント

迷ったら次の3つを考えてください。

① 痛みの強さ

生活に支障があるか

② 画像の進行度

レントゲン・MRI・CTで判断

③ 生活の目標

何をしたいのか

例えば

  • 旅行に行きたい
  • 孫と遊びたい
  • 正座したい
  • ゴルフしたい

治療は、画像ではなく人生に合わせて選ぶことが大切です。


8. まとめ|どちらが良いかは「膝の状態」で決まる

結論としては、

再生医療が向く人

✔ 初期〜中期
✔ 手術を避けたい
✔ 自分の膝を残したい

人工膝関節が向く人

✔ 末期変形
✔ 強い痛み
✔ 歩行障害あり

大切なのは「流行りの治療を選ぶ」ことではなく「自分に合った治療を選ぶ」ことです。

膝治療は、“高い治療”より“正しい治療”のほうが大切です。


9. 当院でのご相談について

「人工膝関節にするべきか?」

「再生医療でまだ頑張れるか?」

迷われている方は、診察と画像検査で適切に判断することができます。

膝の痛みでお悩みの方は、どうぞお気軽に整形外科医塗山にご相談ください。


10. 参考文献

  1. Bannuru RR, et al. OARSI guidelines for the non-surgical management of knee osteoarthritis. Osteoarthritis Cartilage. 2019.
  2. Evans JT, et al. How long does a knee replacement last? Lancet. 2019.
  3. Filardo G, et al. Platelet-rich plasma intra-articular injections for cartilage degeneration. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2015.
  4. McAlindon TE, et al. OARSI recommendations for management of knee OA. Osteoarthritis Cartilage. 2014.
  5. Kon E, et al. Mesenchymal stem cell treatment for osteoarthritis. Bone Joint Res. 2022.



膝関節の状態を見極めながら、治療方針を考えるのがベスト!

膝

膝を壊して歩けなくなったら困る整形外科医塗山でした!



【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医

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